社長メッセージ

「Change the 卸 Forever」のその先へ――
卸の強みを生かしながら、
卸の枠を超えるという挑戦

株式会社メディパルホールディングス
代表取締役社長
渡辺 秀一

写真:株式会社メディパルホールディングス 代表取締役社長 渡辺 秀一 写真:株式会社メディパルホールディングス 代表取締役社長 渡辺 秀一

メディパルグループが創業より大切にしている使命、信念とは何でしょうか。

一言で言うならば、それは「流通価値の創造を通じて人々の健康と社会の発展に貢献します。」という経営理念そのものです。私たちは、人々の命や健やかな暮らしに必要な医薬品や日用品などを届ける、公共性の高い事業を担っています。平時・有事を問わず、日々の暮らしを支え続ける社会インフラを止めないという大きな使命を果たし続ける覚悟は、いつの時代にあっても変わることのない強い信念と言えます。

この思いを強く認識した出来事が2つあります。

1つ目は、1995年の阪神・淡路大震災の経験です。被災した中で従業員がすぐ前を向き、私たち卸は何のために存在するのか?今何をすべきか?を考え、速やかに供給活動を継続した、いわば有事対応の原点ともいえる出来事でした。

2つ目は、私が(株)メディセオの社長に就任した2004年に起きた物流センターのシステムトラブルです。目の前に商品があるのにお届けできない事態となり、お得意様に多大なご迷惑をおかけしました。「必要な商品を、必要な量だけ確実にお届けする」ということがいかに大事なことかを痛感しました。

これらの経験を学びとして、リスクを未然に防ぐ意識と事業継続を可能とする機能を磨き続けてきました。その積み重ねが、今日の強靭な企業グループの体制構築へとつながっています。

業界を取り巻く経営環境が激変する中、メディパル独自の先駆的・革新的な取り組みの歩みと、たゆまぬ変革を続ける理由について教えてください。

少子高齢化、労働力不足、物流問題、社会保障費の増大など、事業を取り巻く環境が構造的に変化する中、私たちは「2027メディパル中期ビジョン Change the 卸 Forever ~たゆまぬ変革を~」を掲げ、持続的な成長を目指しています。

5つの成長戦略(「海外への進出」、「予防・未病、アグロ・フーズ領域の事業拡大」、「デジタルを活用したビジネス基盤の強化」、「持続可能な流通の構築」、「地域医療における価値共創」)を進めており、それぞれ着実に成果を積み重ねています。具体的には、JCRファーマ(株)とのパートナーシップにより医療用医薬品の研究開発段階から投資を行うビジネスモデルを確立したり、(株)メディスケットを設立してシェアリングロジスティクスといった新たな物流の形を実現しています。さらに、予防・未病領域の事業を加速させる(株)プリメディカ、アグロ・フーズ領域の成長をけん引するMP五協フード&ケミカル(株)、コンパニオンアニマル※1市場でのビジネスノウハウをもつシグニ(株)などが新たにグループに加わり、事業領域の拡大が加速しました。

これからの時代は、医薬品卸として成長を続けてきた過去と同じ発想とやり方では生き抜くことはできません。それゆえ、時代の変化を先取りし、果敢な挑戦と積極的な投資を続けることで未来への道を切り拓いていきます。変革には時間を要しますが、今進めている成長戦略の取り組みはいずれも中長期的な収益の拡大につながっていくものと見込んでいます。

※1 伴侶動物とも表現され、日常生活の中で人とより密接な関係を保つような動物

(株)PALTACをTOB(株式公開買付け)によって完全子会社化するという決断に込められた戦略的狙いについてお聞かせください。

(株)PALTACは、「美と健康」の領域で化粧品・日用品、一般用医薬品といった生活必需品をお届けする卸として国内No.1の盤石な地位を築いています。これまでは上場子会社として独立した経営を行っておりましたが、現在私たちを取り巻く事業環境は、超高齢化の進展や生活者の予防・未病への関心の高まりなど、かつてないスピードで変化しています。この変化をチャンスと捉え、グループ全体としてのヘルスケアにおける貢献度を最大化するために完全子会社化へ踏み切りました。

医療や介護の重心が地域や在宅へと移り変わる中、同社が持つ高い物流生産性とメディパルの厳格な品質管理ノウハウを融合させ、唯一無二の「ヘルスケア流通プラットフォーム」を構築します。両社の機能や人材の全てを結集することで、治療から予防、日々の健康に至るまで生活者の生涯を支える、持続可能で効率的な新しい供給体制の実現を目指します。

同社の完全子会社化によるグループ一体経営は、私たちが10年以上かけて「Change the 卸」を追求してきたことで実現できた形だと考えています。個別の会社の集まりから、グループ一丸となって生活のさまざまな場面を支える強固な企業集団となり、「医療と健康、美」の領域においてシームレスな価値提供を行っていきます。

イノベーションを起こし続けるために、どのような人材育成や企業風土の醸成に取り組んでいますか。

ビジネスモデルの変革を推し進め、未来を切り拓くために重要なのは人材です。
ヘルスケアの基本は人と人であり、リアルな接点でできているものであると考えています。人として大切な思いやりの心が無ければ、私たちのビジネスは成り立ちません。そういう意味では、私たちが届けているものは、商品だけではなく、その先にいる患者さんや生活者のより良い健やかな暮らしを願う、従業員一人一人の思いだと言えます。顧客の課題をいかに解決するかを自ら考え、そのために行動できる人材がメディパルには必要であり、物事の本質を見極め、主体的に問いを立てて果敢に行動できる「未来志向型人材」の育成に力を入れています。

また、経営者自らが従業員と対話を重ねることを大切にしています。トップが直接思いを語り、行動で示すことで、何をしようとしているかの意図が組織全体に伝わり、変化や失敗を恐れず挑戦する風土が根づいていくのではないかと思います。

私の願いは、メディパルグループに集う全ての従業員が、自ら社会インフラを支えているという誇りと信念を持って働くことで幸福感を得られる会社にすることです。日々、さまざまな事象が起こる現場には、真摯にお得意様と向き合い、課題に挑み続ける姿、そして課題を解くために仲間同士で知恵を重ね合う姿が随所にあります。私たちは、人々の健やかな暮らしを支える従業員の姿やグループ各社がそれぞれの事業を通じて「医療と健康、美」を広げ、支え、つなぐ姿を「健康応援オーケストラ」と称しており、一人一人の音色を磨き(=個性の進化)、重ねていく(=組織の進化)ことがイノベーションの源泉となり、企業成長のための大事な礎になると思っています。

持続的な成長とサステナビリティ経営に対する考え方を教えてください。

写真:株式会社メディパルホールディングス 代表取締役社長 渡辺 秀一

社会に対して川上から川下まで、途切れることのない流通を提供し続けること自体が、当社グループが果たすべきサステナビリティの根幹です。私たちは社会課題の解決とグループの成長を両立させるため、温室効果ガス排出量の削減や共同輸配送の推進など、サプライチェーン全体での最適化を進めています。

こうした社会課題への取り組みは、決して当社グループだけで成し得るものではありません。ここで重要になるのが共存共栄の精神です。お得意様や志を同じくするパートナー企業の皆さまと手を取り合い、社会全体で共に栄えていく姿勢こそが、持続可能な未来を創り出します。

そして、この共存共栄を成り立たせる大前提が、社会からの確固たる信頼です。コンプライアンスの遵守は社会から信頼される企業としての基本姿勢であることを全従業員に徹底し、どのような状況下でも決して揺らぐことのない経営の軸として守り抜いていきます。

資本政策、株主還元の考え方についてお聞かせください。

現在、メディパルグループは激変する環境の中で持続的な成長を確かなものとするために、新たな事業への投資を積極的に行っている局面にあります。そのような中で、資本政策に関する基本方針に基づき、資本収益性の向上と資本コストの低減を両輪とする事業・財務活動を通じて、企業としての持続的成長と企業価値の最大化に努めています。

株主の皆さまへの利益配分については、経営の最重要課題の一つと位置付けています。この課題に対し、原則として配当性向を安定的に維持・向上させることと併せ、資金需要を総合的に見極めながら、資本効率の向上と株主の皆さまへの一層の利益還元を目的とした自己株式の取得・消却を弾力的に実施しています。

この考え方のもと、今般の(株)PALTACの完全子会社化に伴い当社グループの利益水準が向上する見込みとなったことから、今後の財務状況等を勘案し、株主の皆さまへの還元をさらに充実させるために、配当予想を上方修正しました。今後も、事業の成長による利益成長と適切な資本政策の実施により、株主の皆さまの期待に応えられるよう努めていきます。(詳細はP.51)。

これまでの歩みや数々の変革を通じて、メディパルグループは社会にとってどのような存在へと進化していくのでしょうか。今後の展望をお聞かせください。

心躍るような大きな夢を描き、実現に向けてすぐ行動に移す。課題があればさまざまな角度から修正をしながら、最初に抱いた信念を貫く。これが今のメディパルの姿だと感じています。

私たちの掲げる「Change the 卸」とは、社会インフラとしての役割を果たしつつ、「卸の強みを生かしながら、卸の枠を超える」という挑戦です。まだ誰も成し得ていない取り組みなので難易度は高いですが、投資というさまざまな事業の種をまき、質の高い人材が知恵を集めて大切に育てていくことで、少しずつ事業の範囲や仕事のあり方が変わりつつあることを実感しています。この変革を進めていくことが、より多くの人々のお役に立てる企業グループへと進化することにつながると信じて、自分たちの目指す道を歩んでいきたいと思います。

引き続き、ステークホルダーの皆さまの変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。