事業開発担当取締役メッセージ

新規事業の現状認識

これまで新規事業として「AR活動」「PFM®*」「PMS」「デジタル事業ほか」の4つの事業に取り組んできました。現在では90億円程度の売上総利益を生み出すまでに成長しており、メディパルグループの業績への貢献を果たすことができています。
10年以上にわたり推進してきたこれらの事業の多くは、すでに各グループ会社に承継され、安定した収益を生み出しています。現在は次なる段階に入っており、新しい成長の源泉をつくるべく、当社グループ全体として領域の拡大に向けた取組みを行っています。「医療と健康、美」の事業フィールドにおいて、「探索」と「深耕」を行い、「新規事業」を立ち上げることでグループの成長に貢献していきます。これらの取組み内容や実績の開示方法についても、よりわかりやすい形にしてステークホルダーの皆様にご理解いただけるようにしていきたいと思っています。
一方、これまで、着実に利益を創出する事業として成長してきたPFM®については、そのニーズは今後も一層拡大していくことが見込まれることから、2027メディパル中期ビジョンの最終年に向け、一歩踏み込んだ戦略を立てていく必要があります。現在のビジネススキームは開発投資の一部を当社が負担する形態ですが、今後は当社が製造・販売のライセンスを取得することで、海外展開を図っていくことを視野に入れています。これはすなわち、従前からのPFM®のコンセプトをバリューチェーンの川上にまで広げていくことを目指すものです。

PFM®:Project Finance & Marketing 医療用医薬品の開発投資を通じて、製薬企業とともにリスクとリターンを共有するビジネスモデル
PMS:Post Marketing Surveillance 製造販売後調査。医薬品や医療機器を発売した企業が、製品の品質、有効性、安全性を確認するために法的に義務づけられた調査

成長戦略~海外への進出~

本ビジョンに掲げている5つの成長戦略の1つ目に掲げている「海外への進出」については、引き続き、JCRファーマ(株)が創出した超希少疾病用医薬品の開発および事業化を推進していきます。当社とJCRファーマ(株)は、2023年9月に、JR-446のムコ多糖症ⅢB型を対象疾患とした海外事業化に関する実施許諾契約および日本における共同開発・商業化契約を締結しました。臨床第 I/II相試験の治験計画届が独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に受理され、所定の調査が終了しています。2024年9月までに日本国内で同試験を開始する予定です。ムコ多糖症ⅢB型はライソゾーム病の一種であり、重度の中枢神経障害を呈する疾患です。世界における患者数は500人から1,000人と推察されている超希少疾患であり、現在までに承認されている治療法はありません。この疾病に苦しむ患者さんの治療に貢献するため、可能な限り早期に承認を取得して、同医薬品をお届けしたいと思っています。
この事業は、これまでの卸の事業モデルとはまったく異なるものであり、収益の拡大が見込めるとともに、患者さんの治療に貢献するという社会的意義のあるものと考えています。

厚生労働省班研究等の公開情報およびJCRファーマ(株)の独自調査をもとに算出

成長戦略~予防・未病、アグロ・フーズ領域の事業拡大~

2024年5月に子会社化した(株)プリメディカは、疾患リスクを可視化でき、脳梗塞・心筋梗塞、認知症、膵臓がん、大腸がん、慢性腎臓病などの検査サービスを展開、多くの人間ドックで採用されています。中でも、脳梗塞・心筋梗塞発症リスク検査「LOX-index®(ロックス・インデックス)」は、同社が開発し特許権を取得しており、この領域の検査では提携医療機関数、受検者数で国内最大級の実績を有しています。
当社は長年、病気になる前の段階でのビジネス展開を志向してきました。このたびのスキームにより、(株)プリメディカの高付加価値な各種検査サービスと当社グループの全国の経営資源(医療機関ネットワーク、営業リソース、物流網など)を掛け合わせた成長戦略を推し進めていきます。さらに、同社の腸内フローラ検査サービス「Flora Scan®(フローラスキャン)」は、既存の医療機関販路に加え、医療機関以外の販路の拡大を期待できるものであり、医療用医薬品等卸売事業のみならず、当社グループ各社との事業シナジーを想定しています。
2023年3月に子会社化したMP五協フード&ケミカル(株)は、食品分野と化成品分野の幅広い商品を提供しています。腸内細菌の検査とともに、その人に合った食事の指導も始めています。(株)プリメディカとMP五協フード&ケミカル(株)の事業シナジーの創出も期待でき、当社グループの2つ目の成長戦略である「予防・未病、アグロ・フーズ領域の事業拡大」は大きく進展したと捉えています。

人的資本の活用について

新規事業などの事業を実行するにあたっては、国内では概ねグループ内の人材を登用しています。必要に応じて社内公募制も活用しています。新しいことに挑戦し、自己のキャリアアップを果たしたいという積極的な人材に、そのチャンスを与えることは、グループ全体にとって良い影響を与えます。
当社グループには製薬企業への出向経験や海外での勤務経験のある従業員もおり、海外での事業展開を行っていく際にそれを担うことができます。現地での人材採用や、現地の法律に沿って医薬品の許認可を受けて販売していくということは容易ではないかも知れませんが、そのような経験を積むことでより成長していくことができると思っています。
一方、すでに経験と実績のある人材を採用して専門的な役割を担っていただくことで、確実に事業開発を進めていくことができます。ここ数年でそのような専門性の高い人材の採用を進めています。新規事業の取組みを進める中で、人的資本の拡充・強化についても先行投資をしてきましたが、その成果は着実に表れています。

成長投資について

現在は事業ポートフォリオをシフトしていくために必要な成長投資を積極的に行っている段階です。投資案件もかつてはPFM®など医療用医薬品が中心でしたが、最近ではデジタル、検査、食品など幅広い領域の案件が増加しています。コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)ファンドによる投資実績は、2024年4月に実施した(株)エムネスを含め12件となりました。
CVCファンドでは年間70を超える案件を検討しています。その中からリターンや当社グループの事業とのシナジー効果などについて厳しく確認し、条件に見合うものに出資をしています。(株)エムネスへの出資は、医療情報のフルクラウド化時代を見据えたものです。
最近では、海外での希少疾病用医薬品開発事業に関するものや、企業を完全子会社化する案件など、金額の大きな投資も多くなってきました。事業ポートフォリオのシフトをするためにはそれらは欠かせないものであり、ある程度のリスクをとりながらも、将来の事業成長の実現に向けて今後も積極的な投資を行っていきます。