社長メッセージ
革新的な卸として日々進化
メディパルグループには思い描く明確な企業像(ありたい姿)があります。
それは、「『医療と健康、美』を広げ、支え、つなぐ健康応援オーケストラ」です。健やかな暮らしは人々の切なる願いです。健康寿命の延伸に向けて、私たちには何ができるのかを常に問いかけ、グループに集う従業員一人ひとりの個性を生かした絶妙なハーモニーによりさまざまな可能性を追求することで、「医療と健康、美」という広いフィールドの中で多くの社会価値、顧客価値を生み出したいと考えています。
メディパルグループは、3つの事業セグメント「医療用医薬品等卸売事業」、「化粧品・日用品、一般用医薬品卸売事業」、「動物用医薬品・食品加工原材料等卸売事業」を有しており、いずれも人々の生命や健やかな暮らしを支えるために欠かせない商材を取り扱っています。その意味において、電気やガス・水道と同じように無くてはならない、そして決して途絶えさせてはならない社会インフラの一翼を担っていると自負しています。
1898年の創業から今日に至るまでに、さまざまなM&Aや事業改革を繰り返してきました。いずれも時代の先をいく画期的な動きでしたが、これにより、全国規模の流通、効率的な流通、有事に強い流通、変化に対応できる流通といった強靭な基盤とネットワークを構築し、さらには経験豊かな人材を創出することができています。
先取りの企業姿勢は事業の進化にも結び付いています。例えば、医療業界においては、バイオ医薬品や希少疾病用医薬品など、管理や配送の難易度が極めて高いものが増えてきています。その一方で、慢性疾患などに用いる品質が良くて低薬価のジェネリック医薬品の総量が8割を超えました。この相反する特性の商品を、質を担保しながら効率的に適切なタイミングで確実にお届けしたり、スピーディーな検品で納品時間を大幅に短縮できていることはメディパル固有の大きな強みとなっています。この強みを活かして、さまざまな新規事業を創造するなど、収益の多角化を実現しています。
「Change the 卸」の歩み
日本は、諸外国に先駆けて少子高齢化が進んでおり、労働人口の減少、社会保障費の増大など避けて通ることのできない課題が山積しています。そのような厳しい環境が今後も続くと想定し、2014年以降、メディパルでは「Change the 卸」のスローガンのもと、いち早くビジネスモデルを変えていこうと全社一丸となって事業の革新に取り組んでいます。
過去8年にわたるビジョンでは、営業機能と物流機能それぞれの質に磨きをかけてきたとともに、グループ会社間でのシナジーを生み出す取組みを進め、さらに新規事業においては創造する段階から拡大に向かうステージにまで成長させることができました。特に直近の3年間では、志を同じくする異業種企業、ベンチャー企業、デジタル関連企業などとのパートナーシップに注力し、画期的な医療技術を世に出すための投資を行ったり、お互いの強みを融合して配送時の環境負荷を軽減するなど、グループの強みをフルに生かした取組みを進めてきました。
想定外の出来事もありました。それは、世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大です。経済や人の動きが止まったことにより、業績面では当初思い描いていたビジョンの目標値には届きませんでした。しかし、自信を得る機会にもなりました。それは、従業員が先行きの見えない状況に臆することなく、徹底して感染リスクを最小にとどめ、知恵と工夫を駆使して、必要とされる医薬品や商品の供給を継続したことです。もともと使命感が高く有事には強い企業風土ですが、未知の感染症に正しく臨み、事業継続に努める姿は誇れるものであり、もっと世の中に私たちの存在をご理解いただきたいと思った次第です。また、ワクチンの管理・配送という国民を守るための一大プロジェクトに対して、自社で構築してきた超低温輸送の技術と流通ノウハウが大いに役立ちました。「Change the 卸」の過程で手掛けてきたことが未曽有の事態に効果を発揮して世の中のお役に立てたのですから、これまでの歩みや投資は間違っていなかったのだと、自信をもって先に進むことができました。
「ありたい姿」に向かうための大事な5年間
現在、「2027メディパル中期ビジョン Change the 卸 Forever ~たゆまぬ変革を~」に沿った取組みを推し進めています。ありたい姿に描いた「『医療と健康、美』を広げ、支え、つなぐ健康応援オーケストラ」。本中期ビジョンはこの実現をめざしていく上での大事な航海図となります。
この5年間で取り組む成長戦略は、いずれも過去の延長線上にはないものです。したがって、メディパルにとって未知なもの、経験の少ないものもあります。例えば、海外進出、予防・未病領域への拡大、アグロ・フーズ事業の拡大などは、いずれも大いなる挑戦になりますが、世の中にまだ無いものを創造できる喜びがあります。人々を幸せにできる挑戦だからこそ、やりがいをもって未来への路を切り拓いていけると考えています。
これからの卸は、単に商品を仕入れて販売するビジネスだけでは成り立ちません。これは明白です。自らの力で未開の土壌を耕し、種を蒔き、大事に育てていくことをしなければ実は成りません。「桃栗三年柿八年」という言葉にあるように、期待した成果が出るまでには時間を要します。しかし、かけた時間と努力のもとに一過性ではない安定した果実(収益)が得られます。これをコツコツと積み上げていける企業でありたいと思います。幸いなことに、私たちには「医療と健康、美」という人々の切なる願いが込められた事業フィールドがあります。そこには育てたい種(投資案件)がたくさんあります。さらには、育てることができる質の高い人材が備わっています。これらの要素に加えて、各種案件ごとに強力なパートナーの存在があり、相乗効果を発揮すれば、ありたい姿の実現は不可能ではないと考えています。足りないものは補います。そのための成長投資(1,000億円)であり、人材のリスキリングです。
この5年間で築く土台やビジネスが、次なる5年10年へとつながっていくという視点をもって積極果敢に挑戦していきたいと思います。
人材戦略と財務戦略が基盤
本ビジョンの成長戦略を後押しするのが、人材戦略と財務戦略です。この2つの遂行と成果がビジョンの実現のみならず、メディパルの持続的成長につながると考えています。
メディパルの未来を担う人材像は「未来志向型人材」です。誠実さ、倫理観、使命感をもった人材が各々の会社の事業を正しく理解して行動することが基本ではありますが、そのうえで、グループ間の事業を横断して活躍できる、広く深いスキルを身につけた人材を育てたいと考えています。会社は成長分野に資源を投入します。このような人材が数多く備わっていれば、事業ポートフォリオのシフトを柔軟に変えていくことができ、スピーディーな経営判断と展開が可能となります。また、本ビジョンでは未知の事業領域への路を切り拓いていきますので、必要に応じて社外から専門性をもった人材の採用も積極的に行っていきます。グループに集う多彩な従業員が、ともに学び成長していくことで企業が成長していく。企業が成長することで事業の幅が広がり、従業員は新しいことに挑戦する機会を得て、さらに成長していく。このような循環で人も会社も育てていきたいと思います。
財務戦略においては、経常利益1,000億円の目標を掲げています。純利益率や総資産回転率の向上に加え、財務レバレッジを考慮した資本政策も進めてROE9%をめざしていきます。また、収益性を高めることで生み出す営業キャッシュ・フローと一部資産の売却を原資として、成長投資、設備投資を行うとともに、株主総還元性向40%を目安とした株主還元を行っていきます。
サステナビリティ経営の推進
持続可能な社会の実現と、企業価値の向上を両立するべく、サステナビリティ方針「未来へつなごう『元気と、かがやき』」を新たに策定しました。この方針のもと、重要課題(マテリアリティ)の見直しを行い、6つの課題を特定しました。グループのCSR委員会が中核となり、社会課題の抽出、自社課題の洗い出し、あるべき姿の議論など、半年以上をかけて検討してきたものを取締役会に諮り策定したものです。責任をもって課題解決に努めていきます。ESGの観点で見ると、「環境」では、温室効果ガス排出量の削減として2030年度に50%削減(2020年度比。Scope1+Scope2)、2050年にカーボンニュートラルをめざします。「社会」としては、ダイバーシティ&インクルージョンの推進を図り、2030年度の女性管理職の割合を20%以上にします。「企業統治」は、健全で透明性の高い企業経営のため、現在も進めているグループコンプライアンスの強化とガバナンス体制の構築に力を注いでいきます。グループ全体での教育をさらに充実させるとともに、取締役会においても、コンプライアンスの遵守状況をモニタリングする仕組みを構築し、コーポレート・ガバナンスの一層の充実を図っていきます。
主体的に事業の変革を進める
変化の激しい時代において、ぶれることなく思い描いたありたい姿を実現していくには、確かなビジョンとともに主体性が求められます。環境のせいにしたり、周囲の動きに合わせるのではなく、自分たちがどうありたいのかを考え、成すべきことを着実に進めていきたいと思います。
メディパルは、人々の健康と社会の発展に貢献するために存在しており、そのために価値を創造しているのだという気概をもち、たゆまぬ変革により成長を続けていきます。
株式会社メディパルホールディングス
代表取締役社長 渡辺 秀一