事業開発本部長メッセージ

「2022メディパル中期ビジョン」
の成果を力に、
新規事業の拡大を加速

株式会社メディパルホールディングス
専務取締役 事業開発本部長 依田 俊英

「2022メディパル中期ビジョン」の総括

「2022メディパル中期ビジョン」において、新規事業は2022年3月期の売上総利益106億円という目標を掲げて取り組んできました。これは、事業機会を細かく積み上げた数値目標ではなく、新規事業を最大限に拡大させ、当社グループの優位性を最大化するという思いを込めたチャレンジングな目標でした。
結果として、2022年3月期の売上総利益は91億円となりました。このように実績をあげながら、同時に5年後、10年後を見据えた種まきも積極的に行うことができており、持続的な成長を見据えた着地点としては合格点の結果であったと捉えています。

各事業の取組み状況

PFM®▶再生医療分野の実績と展望

PFM®は、JCRファーマ(株)の「テムセルHS注」やノーベルファーマ(株)の「ノベルジン錠」「メラトベル顆粒小児用0.2%」などが成長ドライバーとなり、収益に貢献しました。
PFM®の取組みによって、再生医療分野は、当社グループの強みの一つとなりました。開発投資を行うだけでなく、特別な温度管理などの流通ノウハウと組み合わせることで、独自のビジネスモデルを構築しています。PFM®は、当社グループとパートナー企業の双方にとって、非常に大きなメリットを享受できます。製薬企業にとっては、新株発行による資金調達とは異なり株式が希薄化することがなく、プロジェクトに的を絞って必要なタイミングで資金を獲得できます。
今後は、バイオベンチャー企業に対するPFM®の拡大も進めていきます。細胞医薬品を手がけたことで、その保存と物流のノウハウを駆使したビジネス展開は、世界的に見ても唯一無二のものであると自負しています。

AR▶希少疾病分野に特化した人材も育成

ARの存在は当社グループの競争力強化につながっています。他社にはない、MR資格を持ったARがいるからこそ、新規事業のあらゆるプロセスをつなぐことができ、医薬品流通や情報活動、さらには使用成績調査(PMS)の受託へと一連の流れをつくり出し、収益向上に貢献しています。
また、ARの専門性を高めるための組織や教育体制の整備を進めています。希少疾病用医薬品の情報活動に特化した人材として、RD-MR(Rare Disease MR)を編成しました。希少疾病の患者さんが早期に診断を受け、治療を開始できるように貢献するなど、RD-MRは社会的意義の高い取組みの中で重要な役割を果たしています。

使用成績調査(PMS)▶専門性のブラッシュアップに注力

PMSの事業環境は大きく変化しており、オンラインでの医療機関へのリマインドとデータ収集が主流になっています。また、単なる使用成績や副作用のデータ集積ではなく、将来的にはレトロスペクティブスタディ(後ろ向き研究)といったデータ解析に軸足が移るなど、市場のニーズが変わっていく可能性があります。
そのような場合に備え、大学や研究機関とともに臨床研究分野のPMSにも取り組んでおり、専門性のブラッシュアップに力を入れています。

コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)▶本業とのシナジーを生み出す投資案件を選定

2021年3月に、SBIホールディングス(株)の完全子会社であるSBIインベストメント(株)とCVCファンドを共同で設立しました。これまで、有望な案件に対する数件の投資を行っています。CVCの当初の目的は、デジタルヘルス分野をカバーしていくためでしたが、始動してみると、それ以外の分野の案件が想定以上に多くあがってきました。投資案件と本業とのシナジーを見極めたうえで、投資案件を精査しています。CVCは投資先の株式を売却することで一過性の利益を獲得しようとするものではなく、投資した案件が製品化し、それらを当社グループの流通を通じて販売することで、毎年利益を得ることのできるビジネス形態、すなわち本業である卸売業の収益になっていくことをめざしています。

デジタルヘルス▶エムティーアイグループとの業務提携の深化

ヘルスケア分野におけるデジタルサービスは、多くの企業が参入して、活発な開発競争が行われていますので、近い将来、今とは異なる形のヘルスケアの在り方が実現すると想定しています。その時に、当社グループは中心的なプレイヤーとして存在しなければならないと考えています。
2016年に資本業務提携を開始した(株)エムティーアイと緊密に連携しており、当社グループが培ってきた製薬企業や医療機関とのリアルな信頼関係を活かしながら、人々の健康に貢献する新しいデジタルプラットフォームの開発をめざしています。

新規事業の成長シナリオ

新規事業の成長シナリオを描く際には、収益性だけではなく、本業とのシナジー、事業の持続可能性、そして社会貢献も考慮しながら入念な戦略立案をしています。優良な投資先が簡単に見つかるわけではありませんので、積極的に案件を探索し、慎重に吟味したうえで投資を行っています。新規事業では単年度の利益額が注目されがちですが、良い投資がどれだけできたのかということが重要であり、このことが将来的な利益につながっていくものだと考えています。
5年後には年間1,000億円規模の投資を行えるような、ビジネスの広がりとキャパシティのある会社をめざしています。引き続き戦略性をもって投資先を選定し、人的資本をはじめ、あらゆる経営資源を活用しながら新たな価値創造に取り組んでいきます。