事業開発本部長メッセージ

中期ビジョンの実現に向けた新規事業の主な取組み

2023年3月期の概況

「2027メディパル中期ビジョン」において、最終年となる2027年3月期に経常利益を1,000億円とする目標を掲げています。そのうち、新規事業は200億円の目標であり、その達成に向かって積極的に取組みを進めています。2023年3月期は、94億円の目標に対して92億円とほぼ予定どおりの実績となりました。

これまで新規事業に対しては、メディパルグループ独自の重点戦略として力を入れて取り組んできており、現在では継続的に利益を生み出す事業に成長させることに成功しています。一方、次の成長ステージに向けた変革期を迎えていると認識しています。今後のさらなる成長をめざすにあたっては、これまで取り組んできたARやPFM®などの事業をさらに成長させていくのみならず、「海外への進出」や「デジタルを活用したビジネス基盤の強化」など本中期ビジョンで掲げている戦略を具現化し、育てていく必要があります。
これまでの枠組みを外し、より広範囲に視野を広げ、新たな利益を創出する事業を展開していきます。

デジタルヘルス

パートナー企業と当社グループが有する経営資源を組み合わせ、医療DXを推進しています。当社グループの顧客基盤を活用し、卓越した技術やノウハウを持ったパートナーとの協働によって、効率的なビジネス展開をめざしています。
2016年に当社と資本業務提携を開始した(株)エムティーアイがサービス提供を行っている電子母子手帳「母子モ(ぼしも)」は、両社の協業により、520以上(2023年3月末現在)の自治体に導入され、「母子モ子育てDX」へとサービスを拡大。小児予防接種、乳幼児健診といった子育て支援サービスとして、予診票や公費請求のデジタル化を行っています。また、2023年1月にCVCファンドを通じて出資した(株)レイヤードは、クリニックの業務効率化や患者さんとのスムーズなコミュニケーション機会を増やす仕組みづくりを手がけ、かかりつけ医の医療DXを支援し、クリニックの業務効率化と利便性向上に貢献しています。
デジタルヘルスの分野は収益化には時間がかかるものの、今後、新しいインフラになる可能性が見込めることから、長期的な視点で取り組んでいく必要があります。同時に、競争環境が激しい中でどのようなかたちでマネタイズ(収益化)を図っていくかも重要な課題です。現在はそれぞれの取組みが独立して進んでいますが、将来的にはこれらを有機的につなげていくことでインフラ化が進み、マネタイズも見えてくるのではないかと考えています。

JCRファーマ(株)との協働と今後の海外戦略

当社とJCRファーマ(株)は、超希少疾病領域のグローバルな新薬開発に向けた協業を進めています。JCRファーマ(株)が開発中のJ-Brain Cargo(血液脳関門通過技術)を適用した超希少疾病4疾患のグローバル事業化について合意しました。J-Brain Cargoは、脳が持っている鉄分を取り入れる性質を用いて、血液脳関門を通過させて脳内に薬剤を届けるとともに、これまで薬を届けることが難しいとされていた骨格筋にも効果的に薬を届けられる特徴を持っています。
当社はJ-Brain cargoを使用した医薬品を海外において自社品として販売ライセンスを取得し、開発や流通を通じてグローバル展開を図っていく計画です。すでにそのための準備に着手しており、今後2~3年かけて体制づくりを進めていきます。
これらはPFM®に代表されるこれまでの取組みから一歩踏み込んだ、当社にとってチャレンジングな取組みです。こうした取組みを通じて、当社とJCRファーマ(株)は世界中の患者さんとその家族に一日でも早く新たな治療薬をお届けできるよう努めていきます。

コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)

CVCファンドによる投資実績は、2023年7月に発表した(株)グレースイメージングを含め10件となりました。SBIホールディングス(株)の完全子会社であるSBIインベストメント(株)が有する多様なソーシング機能を活かし、さまざまなベンチャー企業への出資可能性を検討しています。出資した案件から画期的な優れた製品が生み出され、それらを当社グループが販売・流通することで本業の利益に貢献することをめざしています。
出資案件も拡大し、加えて当社の評価プロセスも格段に向上しています。当社グループならではの画期的なサービスの創出をよりスピード感を持って進めていきます。

中期ビジョンの実現に向けた人材育成

新規事業の推進においても人材採用と人材育成は重要な事業課題です。成長戦略をスピーディーに進めるためには、経験と実績のある外部人材の登用も必要となります。製薬企業の海外部門経験者などをキャリア採用し、人材育成にも力を注いでもらっています。また、JCRファーマ(株)への出向などを通じて、海外展開を担える人材の育成も進めています。
また、希少疾病用医薬品の情報活動に特化した人材であるRD-MR(Rare Disease MR)は、希少疾病のスペシャリストとして経験を積んでいます。今後、ARがデジタルヘルスやPMSの分野でも新たな役割を担っていけるよう、教育体制を強化していきたいと考えています。