社長メッセージ

「医療と健康、美」の事業フィールドで、
新たな価値創造を通じて、人々の健康と
社会の発展に貢献していきます

株式会社メディパルホールディングス

代表取締役社長渡辺 秀一

写真:株式会社メディパルホールディングス 代表取締役社長 渡辺 秀一 写真:株式会社メディパルホールディングス 代表取締役社長 渡辺 秀一

人々の心身共に健やかな暮らしを支えるために変革を積み重ねる

メディパルグループは、「流通価値の創造を通じて人々の健康と社会の発展に貢献します。」という経営理念のもと、「医療と健康、美」のフィールドで事業を展開しています。また、ありたい姿として「『医療と健康、美』を広げ、支え、つなぐ健康応援オーケストラ」を掲げており、ステークホルダーへの価値を創造する事業を“広げ”、強固な流通インフラで“支え”、さまざまな分野のパートナーを“つなぐ”ことで、誰もが心身共に健やかに暮らせる社会の実現と企業価値の向上を目指しています。

「健康応援オーケストラ」とは、従業員、グループ会社、パートナーが、それぞれの役割・強みに磨きをかけながら、掛け合わせていくことで生まれる新たな価値によって、人々の毎日を、より健やかに、より豊かに“つむいで”いく、――そのような私たちの思いを美しい音楽を奏でるオーケストラのイメージに託したものです。

人々の健やかな暮らしを支えていくためには、平時・有事を問わず安定的に商品を届けることが必要不可欠であり、これは時代や状況が変わっても、決して変化することのない私たちの使命です。日本は、地震、台風、豪雨、豪雪など自然災害の多い国です。そのため、当社グループでは「この国で、薬を届けるという使命。」を全従業員で共有し、必要なものを、必要な時に、必要な量だけ確実に運び届けるための体制を整えています。

当社グループは常に社会とステークホルダーからの信頼に応える“流通のライフライン”でありたいと考えています。

持続的な成長に向けて5つの成長戦略を遂行

医療制度改革、少子高齢化、デジタル革新、環境意識の高まりなど、当社グループの各事業を取り巻く環境はますます多様化・複雑化しています。特に、医療費増大に伴う社会保障制度の見直しや頻繁な薬価改定は、医薬品卸に新たな対応を迫る大きな問題となっています。このような事業環境の変化の中で持続的な成長を成し遂げるためには、卸としての良さを残しつつ過去の延長線上にはない新しいビジネスモデルに変えていかなければならないと考えています。

そこで、当社グループでは「Change the 卸」と称するビジョンのもと、グループ会社やパートナーと連携しながら新たな価値創造に取り組んでいます。ビジョンとは夢を語るものであると考えています。一つずつ夢を実現して、さらにその夢が次の夢につながっていくような企業グループにしていきたいと思っています。

現在、私たちは、2023年3月期から2027年3月期までの5年間の中期ビジョンとして「2027メディパル中期ビジョン Change the 卸 Forever ~たゆまぬ変革を~」(以下、「本中期ビジョン」)に沿った取り組みを、グループ一丸となって推進しています。

本中期ビジョンでは、事業ポートフォリオのシフトとパートナーとの協働によって、5つの成長戦略を展開し、新たな社会価値・顧客価値の創造と当社グループの持続的成長を目指しています。

「海外への進出」

JCRファーマ(株)との協働による超希少疾患領域での新薬のグローバル展開に向けた研究開発を進めています。2024年12月には、JCRファーマ(株)が創製したムコ多糖症IIIB型に対する治療薬(JR-446)について、国内での臨床第Ⅰ/Ⅱ相試験で、第1例目となる被験者への初回投与が行われ、重要なマイルストンを達成しました。今後も、協働による超希少疾病用医薬品の開発を行うことで、治療薬を待ち望んでいる患者さんに少しでも早く貢献したいと考えています。

「予防・未病、アグロ・フーズ領域の事業拡大」

健康寿命の延伸や心身共に健やかな毎日を過ごせる社会づくりのためには、病気の治療だけでなく、未病段階での食事・セルフケア・検査が大切だと考えています。そうした中で、2024年度は子会社のMP五協フード&ケミカル(株)とメディパルフーズ(株)の事業統合や、高付加価値な検査サービスを提供する(株)プリメディカを子会社化しました。現在は、当社グループの強みを生かしながらこれらの会社で事業拡大に向けた商品提供やサービスの確立、顧客基盤の強化を進めています。

「デジタルを活用したビジネス基盤の強化」

近年のデジタル技術の進歩により、日々便利なサービスが生まれています。当社グループも顧客である医療機関や小売業などの業務効率化を実現するデジタルサービスや一般生活者向けの健やかな暮らしを支えるサービスの提供に向けて、さまざまな取り組みを進めています。この取り組みにおいてはパートナーとなる企業の存在が必要であり、2024年度に連結子会社化した(株)プレサスキューブをはじめ、技術力の高いパートナーとの連携により、シナジーを生み出し続けていきます。

「持続可能な流通の構築」

流通機能は卸の重要な事業基盤であり、平時・有事を問わず安定供給を可能にする体制の構築だけでなく、効率性・環境への配慮も重要な課題と位置付けています。「医療と健康、美」を支える国内最大のヘルスケア物流プラットフォームである(株)メディスケットを設立し、医薬品と臨床検査検体の共同輸配送(シェアリングロジスティクス)の導入を都市部において進めており、お得意様との連携によるサプライチェーンの最適化で物流効率と生産性の向上を推進しています。

また、(株)PALTACでは、物流戦略拠点であるRDC*において、蓄積された物流ノウハウにAI・ロボティクス技術を融合させた最新SPAID*モデルをさらに進化させるなど、生産性を2倍以上に高める新物流モデルの構築に挑戦しています。

*RDC: Regional Distribution Center 化粧品・日用品、一般用医薬品等を扱う大型物流センター。小売業様に商品を供給
*SPAID: Super Productivity Advanced Innovative Distribution AIや最新のロボット技術・ピッキングシステムなどを導入し、独自開発した次世代型物流センターのトータル管理・運営システム

「地域医療における価値共創」

効率的な医療の実現のためには地域医療圏という考え方が不可欠です。医薬品卸の強みは、地域の医療機関・自治体・患者さんを“つなぐ”ことができることであり、現在、神経・精神疾患領域、希少疾患領域、女性診療科領域において、各領域に特化した専門性を有する医薬情報担当者が、地域医療コーディネーターとして地域に根差したヘルスケア課題の解決に貢献しています。

変革とは、一朝一夕に実現するものではありません。しかし、時代の先を読み取り、挑戦という小さな一歩を確実に積み重ねることで、未来への道が切り開かれていくと私は確信しています。当社グループは、どのような環境変化にも柔軟に対応し、「卸」の枠組みを超えて世の中のお役に立てる事業に挑戦していきます。

変化や失敗を恐れず挑戦する企業風土の醸成

成長戦略を確かなものとする上で、その基盤の一つとなるのが「人材戦略」です。当社グループは変化の激しい時代の中で持続的に成長していくために、企業価値向上の源泉である人的資本の強化に努めています。

当社グループでは、経営理念の実現を担う人材を「未来志向型人材」と定義しており、現在、そのような人材が生き生きと活躍できるよう、変化や失敗を恐れず挑戦できる企業風土の醸成に取り組んでいます。

世の中の人々の健やかな暮らしを支えているという誇りややりがいを従業員が実感しながら、将来に向けて自らの可能性を広げていけるような挑戦ができる職場環境が、組織全体の活力を高め、企業としての持続的な強さを育む土壌にもなると考えています。

そのためにも、従業員一人一人の心身の健康を支える施策や、ライフステージに応じた福利厚生のさらなる充実にも力を注ぎ、多様な個性や能力を最大限に発揮してもらえる組織の実現を目指していきます。

資本収益性の向上と株主還元の継続的実施

成長戦略を支えるもう一つの基盤が「財務戦略」です。現在、当社グループは、本中期ビジョンに沿って、事業ポートフォリオのシフトを進めており、新たな事業への投資を積極的に行っている段階です。一方では、東京証券取引所が要請する「資本コストや株価を意識した経営の実現」を追求し、PBRの向上に向け、ROEの改善を重視しつつ、PERの改善も併せて推進しています。ROEは成長戦略の実行によって本中期ビジョンの最終年度に9%の達成を目指しています。

株主還元については、株主の皆さまに対する利益配分を経営の最重要課題の一つと位置付け、本中期ビジョン期間中の5年間累計で「株主総還元性向40%」を目標としています。本目標の達成のために、原則として「配当性向※を安定的に維持・向上」させることと併せ、資金需要を総合的に見極めながら資本効率の向上と株主の皆さまへの一層の利益還元を目的とした「自己株式の取得・消却」を弾力的に実施しています。

この考え方のもと、2025年3月期の株主総還元性向は3年間累計で40.2%となり、1株当たり配当金は年間62円(前期から2円の増配)とさせていただきました。取得した自己株式は全て消却しています。

今後も、事業の成長による利益成長と適切な資本政策の実施により、株式市場から評価をいただけるよう努めていきます。

※ 本中期ビジョンに掲げた成長投資に伴い発生するのれん償却費・無形資産償却費控除前の利益に対する率

持続可能な社会の実現と企業価値の向上

当社グループでは、成長戦略の実行においても、収益性向上と社会課題をひもづけて取り組んでおり、その解決とグループの持続的な成長を両立させるための重要課題(マテリアリティ)を6項目特定しています。

中でも、当社グループの事業は、自動車などを使用した流通が不可欠であることから、温室効果ガス排出量の削減は喫緊の課題であると捉えており、解決に向けた取り組みに注力しています。

まずは自社排出分の温室効果ガス排出量削減を第一優先として考え、電気自動車の導入や太陽光パネルの設置などを通じて中長期目標に対して、着実に歩みを進めています。また、サプライチェーン全体での削減も重要であると捉え、流通の最適化を目指した配送回数の見直しなどの取り組みや輸送に起因する排出量削減の取り組みとしてモーダルシフトへの切り替えなど、お得意様との双方の課題解決に取り組んでいます。

重要課題の一つである、「健全で透明性の高い企業経営」に関しては、当社連結子会社であるMPアグロ(株)が、山形県が発注する豚熱ワクチンおよび公益社団法人山形県畜産協会が発注する動物用ワクチンの入札に関し、独占禁止法の違反行為に関わり、関係者の皆さまに多大なるご迷惑とご心配をおかけしました。心よりおわび申し上げます。当社グループでは、本件を厳粛かつ真摯に受け止め、これまでに取り組んできた独占禁止法遵守に関する諸施策をより一層徹底し、社会から信頼される企業としてコンプライアンスの徹底を図り、企業価値向上に努めてまいります。

当社グループは常に変革を目指します。変革を通じて、「医療と健康、美」の各事業分野における長期的な成長を図り、「卸」という原点を大切にしながらも、その枠を超え、さらなる企業価値の向上と株主価値の最大化を追求していきます。ステークホルダーの皆さまにおかれましては、変革を通じた夢の実現にご期待いただき、引き続き変わらぬご理解とご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。