社外監査役対談
持続的成長を支える
ガバナンスと未来への挑戦
社外監査役
市野 初芳 佐貫 葉子


活発な議論が交わされる取締役会の実効性
佐貫 : 企業の持続的な成長には、実効性のあるコーポレート・ガバナンスが不可欠であり、その中心となるのが取締役会です。当社の取締役会では、活発な議論が交わされ、発言が見過ごされることなく、意見の交換・共有がなされています。この点で、私は当社の取締役会の実効性を高く評価しています。私は就任して6年になりますが、その間にIR活動を通じて得られた機関投資家からのご意見などについて議論されるようになったのは大きな進展ですね。
市野 : 確かにそうですね。私は就任2年になりますが、取締役会の実効性は高いと評価しています。これまで、中小企業の役員会に参加することが多かったのですが、プライム市場上場企業である当社の取締役会に参加し、その議論の闊達さに驚かされました。先ほど佐貫さんがおっしゃったように、議長の質問が取締役会において役員の多様な意見を引き出し、それぞれの役員が主体的に発言しています。また、コーポレートガバナンス・コードに準拠し、取締役会の実効性評価を第三者によるアンケート調査に基づき客観的に評価しようという姿勢も評価できます。
社外監査役の視点から見た中長期の重要テーマ
佐貫 : 社外監査役として私の役割は「法的リスクを含めたリスクマネジメント体制の適切な構築」にあると思います。企業を取り巻くリスクは変化しており、近年ではサイバー攻撃などの新たな脅威も生じています。こうした変化に対応するため、リスクマネジメント体制もアップデートし続けなければなりません。その実現には、限られた資源をどこに配分するかが重要になります。現時点では運用は順調ですが、今後発生し得る突発的なリスクに対してさらに注視が必要だと思っています。
市野 : 私は、企業の財務報告が専門ですので、社外監査役としての役割を「財務報告の質的向上とグループガバナンス・システムの確立」にあると考えています。近年、M&Aにより、グループ会社が増え、それに伴い、グループガバナンスの重要性がますます高まっています。特に、東京証券取引所から「資本コストと株価を意識した経営の実現に向けた対応」が求められていることから、今後は、グループ全体の資本収益性の向上のための取り組みが重要なテーマになると思われます。
グループガバナンス深化への提言
佐貫 : 私はコンプライアンス委員会※の活動は非常に評価しています。独禁法の問題が起こった際、社長が管掌として主導し、法令遵守の徹底を図っていました。コンプライアンス委員会から取締役会へ定期的な報告がなされています。監査役会は法的な機関として活発に活動しており、各部署との連携も良好だと思います。
※ 2025年4月1日付でコンプライアンス委員会は、コンプライアンス・リスクマネジメント委員会に名称変更

市野 : グループガバナンスの向上という点で、独禁法の問題等が発生した際には、コンプライアンス統括室と監査室が緊密に連携し迅速に対応したことで、大きな役割を果たしたと思います。
また、監査役会については、常勤監査役が長年のキャリアと経験を生かし、迅速かつ合理的に情報を収集している点を高く評価しています。また、医療用医薬品の卸売事業4社※では、監査役連絡会が定期的に開催され、各社における監査上の問題点や課題の共有化が図られていて、グループガバナンスの向上に重要な役割を果たしていると思います。
佐貫 : グループガバナンス全体を見ると、取締役会の議論が医療用医薬品の卸売事業会社4社※に集中し、それ以外の企業の情報共有が若干遅い点が課題だと感じています。特に(株)PALTACなど、医療用医薬品流通以外の業態について、もう少し議論を増やした方が良いと考えています。また、近年、グループ会社の数が増えました。それぞれの会社は、規模の大小、関係性の濃淡も異なるため、メリハリをつけたガバナンスがあってもよいのではないでしょうか。
また、指名・報酬委員会については、任意の制度かつ設置から日が浅いこともあり、まだその存在意義が組織に浸透していない印象があります。ややもすると受動的な役割になってしまいがちですので、今後は取締役会規定などで位置付けを強化し、より能動的な役割へ転換していくことを期待しています。
※(株)メディセオ、(株)エバルス、(株)アトル、東七(株)の4社
市野 : そうですね。当社は、医療用医薬品等卸売事業を中心に多角的な事業を展開していますので、事業的シナジーを常に念頭に置き、それを追求しながらグループ各社を経営していくことが必要であると考えています。
一方で、グループガバナンスを深化させるためにはグループ企業全体の財務的なシナジーを高めることも必要です。そのためには、現状を正しく分析することが求められます。すでに、当社の資本コストは示されていますので、今後は中期経営計画に示されている数値目標を達成するために、資本収益性を高めることが必要であり、収益力・資本効率のさらなる向上が求められます。
私は、社内にグループ各社の財務状況を逐次把握し、財務的な意思決定に必要な情報を集約して具体的な財務政策を立案して取締役会に提案する部署の設置が必要なのではないかと思います。当社グループの財務状況を常に全体として把握し、表明している資本政策の基本方針を実践していくための具体案を検討するための部署です。その提案を取締役会で議論し、その結果が示されることで、当社の成長可能性が市場で適切に評価されるようになること、これが今後の課題として考えられるのではないかと思います。
メディパルグループへの期待

佐貫 : 医療や健康に関する事業は、非常に社会的意義のあるものだと思っています。薬を届けるという使命を核に、社会に必要な企業グループとして、今後も成長を続けてほしいと願っています。実際、医療用医薬品等卸売事業では高機能物流センターALC*の設置で事業の効率化を進め、さらには新規事業として希少疾病用医薬品の流通、開発の支援を展開しています。現在の日本の薬価制度では、構造的に医療用医薬品等卸売事業の収益性が低くなりがちですが、そうした中でも、収益性の向上と社会的意義の両立を志向していくことを期待しています。

市野 : メディパルホールディングスでは役員をはじめ、会社全体にミッションオリエンテッドな姿勢が根付いていると思います。「流通価値の創造を通じて人々の健康と社会の発展に貢献します。」という経営理念を実現していくために、自らの目標を定め、将来のありたい姿に向かって取り組む姿勢は、今後も貫いてほしいと思います。そして、「医療と健康、美」という事業フィールドで中心的な存在であり続けることを期待しています。
また、希少疾病用医薬品の開発事業への投資は、成果が出るまで忍耐を要するものですが、企業としての重要な社会貢献の一つであると考えますので、今後の成長に大きな期待を寄せています。多様な事業を展開する当社グループが、事業的・財務的シナジーを高めながら、グループ全体として持続的成長に挑戦することに期待しています。
*ALC : Area Logistics Center 医療用医薬品や医療材料、臨床検査試薬などを扱う高機能物流センター。主に調剤薬局、病院、診療所などに商品を供給