事業開発担当取締役メッセージ
「医療と健康、美」の事業フィールドで、
社会的意義の大きい成長投資を
着実に実行していきます
株式会社メディパルホールディングス
専務取締役 IR担当 兼 事業開発本部長依田 俊英


社会環境の変化を踏まえ、新たな収益を生み出す事業を創造
メディパルグループの中心的な事業は卸売事業であり、収益の柱となっています。しかしながら、わが国で進行している少子高齢化や人口減少などの社会環境の変化を考えると、継続的かつ安定的な成長を実現していくためには、卸売事業の強化に加えて、新たな収益を得る事業を創造していく必要があると考えています。
そこで当社は、中期ビジョンにおいて「Change the 卸」という構想を打ち出し、今後想定される厳しい事業環境においても持続的な成長を実現していくための変革として、既存ビジネスだけに頼らない「事業ポートフォリオのシフト」を進めています。
当社グループでは、これまで新規事業として10年以上にわたって「AR*活動」「PFM®*」「PMS*」「デジタル事業ほか」の4つの事業に取り組み、これらの事業の多くは各グループ会社に承継され、安定した収益を生み出しています。そして現在は、事業開発の次なるステージとして、卸売事業で培ってきたメーカー・お得意様との深い関係性や物流設備・人材などの経営資源を活用すると同時に積極的な成長投資を行うことで、新たなビジネスの立ち上げなどによるさらなる収益源の拡大を目指しています。
*AR: Assist Representatives 認定試験に合格したMS(医薬品卸売業の営業担当者)や薬剤師などに付与した社内呼称
*PFM®: Project Finance & Marketing 医療用医薬品の開発投資を通じて、製薬企業と共にリスクとリターンを共有するビジネスモデル
*PMS: Post Marketing Surveillance 製造販売後調査。医薬品や医療機器を発売した企業が、製品の品質、有効性、安全性を確認するために法的に義務づけられた調査
着実な成果を出す2027メディパル中期ビジョンにおける成長投資

当社グループは、2023年3月期から取り組んでいる本中期ビジョンにおいて1,000億円規模の成長投資を計画し、2025年3月期までの3年間で約700億円の投資を行ってきました。
その主な内容は、MP五協フード&ケミカル(株)の子会社化や希少疾病用医薬品の開発投資などで、いずれの投資も今後のグループの成長を実現していく上で不可欠なものだと捉えています。MP五協フード&ケミカル(株)の子会社化については、のれん・無形資産償却の影響はありますが、グループ内でのシナジー効果も発揮できており、中長期的にグループの成長に貢献していく手応えを感じています。一方で、希少疾病用医薬品の開発投資については、現時点では商業化の権利取得や臨床試験の費用が先行している段階です。しかし、医薬品の承認を取得して発売した後には、従来の卸売事業よりも高い利益率が確保できる事業として、当社グループの収益の柱の一つになっていくと見込んでいます。
新薬の開発事業は大きな投資を要しますが、難病に苦しむ患者さんやそのご家族に貢献できるだけでなく、当社グループとしても将来的に高い収益性が見込めると同時に、海外に事業拡大する足掛かりにもなる重要な事業だと捉えています。
2025年2月には、米国カリフォルニア州サンディエゴで開催された「WORLDSymposium™ 2025」に参加しました。これは、希少疾患であるライソゾーム病をテーマに、研究者たちが医師や患者団体などのライソゾーム病に携わる方々に最新の研究の進捗などを報告するために米国で毎年開催されている国際学会です。講演や発表では、特に遺伝子治療の分野で治療薬の開発ステージの前進を感じさせる内容が増加していました。また、患者会の方々との交流を積極的に行い、新薬に対する期待の高さを改めて実感するとともに、今後の開発に向けて有用な情報を得ることができました。
今後、同学会での経験も踏まえながら、当社グループが取り組んでいるライソゾーム病の一種であるムコ多糖症ⅢB型に対する治療薬について、可能な限り早期に承認を取得して事業化を実現したいと考えています。
成長投資について
現在の当社グループの成長投資は、原則として「医療と健康、美」の事業フィールドに関連する社会的意義が大きいものに限定して行っています。投資を行った後も、既存事業とのシナジー効果が発揮できるよう、当社グループ各社と連携して、それぞれの市場での取り組みを推進しています。
また、当然ながら投資においては、いかにしてリターンを得るかが重要であり、それを主要な経営課題の一つとして認識しています。投資判断については、取締役会や当該事業の担当部門においてリスク、リターン、実現可能性などをさまざまな方向から慎重に検討して、決議を行っています。
コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)ファンドを通じた出資を実行
当社は、2021年にSBIインベストメント(株)と共同でCVCファンド「MEDIPALInnovation 投資事業有限責任組合」を設立しました。この取り組みには、SBIインベストメント(株)が有する多様なソーシング機能と豊富な投資経験を活用した国内外のベンチャー企業への投資および成長支援を行い、収益基盤の拡大と企業価値の最大化を目指すとともに、持続可能な経済社会の実現に貢献していくという目的があります。
これまでに非常に多くの案件について投資検討をしてきました。その中には当社単独では見つけることができなかったような有望な案件がたくさんありました。CVCファンドを設立した効果は非常に高かったと考えています。
同ファンドでは、これまでに医療DXやバイオなどの分野で有望なベンチャー企業に対して出資を行っています。出資に対するリターンについては、さまざまなパターンが考えられますが、基本的には出資先企業との協働によるシナジー効果により新たな価値を創造し、そこから販売増や利益増を実現していきたいと考えています。
「ありたい姿」を実現し、より社会に貢献する企業となるために
当社グループには、長年にわたる卸売事業を通じて培ってきたメーカーやお得意様との強固なネットワークがあります。そして、日本全国を網羅する強靭な物流網も有しています。これらの既存事業のインフラを土台として、その土台の上に新たな事業を創出していくというのが当社グループの事業開発の方針です。この方針の実現には、人的資本と財務資本の効率的な配分や、優れたパートナーとの関係構築が重要です。
今後も「ありたい姿」を実現し、より社会に貢献する企業となるために積極的な活動を継続していきます。