社長メッセージ

流通価値の創造を通じて
人々の健康と社会の発展に
貢献します。

株式会社メディパルホールディングス
代表取締役社長

渡辺 秀一

流通を通じて社会に貢献する

メディパルは、「医療と健康、美」のフィールドで卸売業を主たる事業としている企業グループです。数多くのメーカーと医療機関、調剤薬局、ドラッグストアなどのお得意様を結び、商品や情報を的確にお届けするだけでなく、業界全体のサプライチェーンの効率化に貢献しています。
卸という業種は、最終受益者である患者さんや生活者の方々に直接接する機会はありません。しかし、私たちが提供するさまざまな流通サービスにより、例えば医療機関の業務効率がよくなれば、患者さんにはより充実した医療機会が提供されることにつながります。お得意様だけでなく、その先にいる人々や社会全体に広く貢献していく。これがメディパルの経営理念であり、グループ各社の共通した思いです。
日本は地震、台風、豪雨など自然災害の多い国です。私たちの取り扱う医薬品や日用品は、人々の生命や健やかな暮らしを支えるのに欠かせないものであり、確実にお届けすることが求められています。平時はもとより有事の際にも安定供給に支障をきたさないよう、高機能物流センターを全国各地に配置し、さまざまな防災対策でレジリエンスを強化しています。医療用医薬品等卸売事業の物流拠点であるALCでは、免震機能や自家発電機能などの対策を施すだけでなく、もし一つの物流センターが被災しても、隣接エリアのALCから供給できる体制を構築しています。1995年に阪神・淡路大震災を経験したことを契機に、知恵と工夫で新たな備えを積み重ね、直面するさまざまな自然災害を乗り越えてきました。このような卸の姿勢と覚悟を、「この国で、薬を届けるという使命。」というメッセージにして、東日本大震災が起きた毎年3月11日に新聞で広く世の中にお伝えしています。
2021年3月期は新型コロナウイルスの感染拡大が続き、社会や行動様式が大きく変化した年となりました。一方で、国民の安全・安心な医療への期待は一層高まっていると思います。医薬品、医療機器、臨床検査試薬、マスク、消毒剤など、予防や治療に不可欠な商品を取り扱う私たちも、顧客や従業員の感染リスクを避け、いかに安定供給を継続するかに腐心しています。まさに、卸売業としての存在価値が問われる中で、「どんな薬も届かなければ、意味がない。」という強い意志で全社員一丸となって流通を支えています。
その一環として、難易度の高い新型コロナウイルスワクチンの輸送においても、私たちが持つ低温物流のノウハウを活かしたコールドチェーン流通体制の構築に関わり、現在、大規模接種会場や職域接種会場などへの配送を担っています。

ALC:Area Logistics Center 医療用医薬品や医療材料、臨床検査試薬などを扱う高機能物流センター。主に調剤薬局、病院、診療所などに商品を供給

グループ経営によりESG・SDGsを重視する

メディパルでは、事業活動そのものが持続可能な経済社会の実現に貢献できるのではと考えていますが、社会や株主からは、より一層、ESGやSDGsへの取組みが求められています。私たちが事業活動を行ううえで、特に課題であると認識しているのは、CO2排出量の削減、そしてダイバーシティの推進です。私たち医薬品卸は、医薬品という生命に関わる商品の特性上、少量多頻度の納品で一日に何度も配送を行うことが当たり前のような感覚になっています。しかし、多くの車両とエネルギーを使っているという現実を直視し、業界全体でこの課題にどう臨み解決していくかを真剣に考え、変えていく時期ではないかと思います。まだ、緒に就いたばかりですが、車両台数の削減や再生可能エネルギーへの転換など、自社で積極的に取り組むのはもちろんのこと、お得意様やメーカー、パートナー企業などのご理解・ご協力を得ながら、この大きな課題を解決していきたいと思います。
自社の製品を持たない卸売業は人こそが財産であり、持続的かつ健全に企業が発展していくためには、人材の育成が欠かせません。多様な価値観を持った人材がさまざまな意見を出し合い、お互いに理解していくことで自身の成長と会社の発展につながっていくと考えています。私たちの中期ビジョンでも「人材の強化と組織の変革」を基本に置き、自ら学ぶ環境の充実、女性が活躍できる環境づくり、他業種でキャリアを積んだ専門人材の積極採用などにより、グループ内のダイバーシティを推進しています。また、次世代を担う人材の育成にも時間とコストをかけています。未来は誰にも予測できません。だからこそ、過去の習慣にとらわれず、想像力をはたらかせて、自ら歩むべき道を切り拓き、メディパルを牽引するような人材を育成していきたいと思います。

中期ビジョンに沿って成長戦略を進める

超高齢社会における社会保障費の増大や労働人口の減少など、社会や業界環境の激変を見据え、メディパルは2014年から「Change the 卸」と称した経営ビジョンを掲げ、従来の考え方や取組みを見直し、利益のポートフォリオを変え、「卸」というビジネスモデルを大きく変革させる戦略を進めています。
現中期ビジョンの「2022メディパル中期ビジョン Change the 卸 Future ー未来への変革」では、既存事業の革新、新規事業の拡大、パートナーシップの構築の3つの成長戦略を推進しています。
今後の収益の柱となる新規事業は、過去10年にわたって取り組んできたものを含めて各種案件が利益貢献のステージに入ってきました。希少疾病用医薬品へ開発投資するPFM®*は、患者数が少ない医薬品の開発支援と安定流通で収益化を図る持続可能なビジネスモデルであり、着実に業績へ貢献し始めています。また、メディパル独自の人材であるARを活用した営業やPMSなどに注力することで、さらなる新規事業の成長をめざしていきます。

医療・ヘルスケアの分野では、ICT化によるデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が大きなテーマになると考えています。医療分野でDXが進めば、医療における無駄の削減、医療機関の業務の効率化、患者さんの利便性向上など、さまざまな効果が期待できます。しかも、コロナ禍により、そのスピードは格段に速くなると思います。これらのテーマに対して、メディパルでは、デジタルヘルスケアの領域で活躍している有力企業とパートナーを組み連携していくことが欠かせないと考え、現在、(株)エムティーアイ、メディカル・データ・ビジョン(株)、(株)Doctorbookといった企業とともに、リアル(=人材や顧客とのネットワーク)とデジタル技術を融合した新しい価値の創造に努めています。
また、異業種との連携で流通の効率化にも取り組んでいます。大手検査センターや試薬メーカーを持つH.U.グループホールディングス(株)とは、お互いのインフラやノウハウを活用し、環境にも配慮した新しい流通の仕組みづくりに挑戦しています。さらに、SBIホールディングス(株)の完全子会社であるSBIインベストメント(株)とともにCVCファンド「MEDIPAL Innovation 投資事業有限責任組合」を設立し、国内外のベンチャー企業への投資および成長支援を行っていきます。
新しい取組みの成果が形となって表れてくるまでには、まだ若干時間が必要となりますが、先見性を持って何が世の中のお役に立つのかを常に考え、新規事業をさらなる強固な体制にしていきたいと思います。

PFM®:Project Finance & Marketing 医療用医薬品の開発投資を通じて、製薬企業とともにリスクとリターンを共有するビジネスモデル
AR:Assist Representatives MR認定試験に合格したMS(医薬品卸売業の営業担当者)や薬剤師などに付与した社内呼称
PMS:Post Marketing Surveillance 製造販売後調査。医薬品や医療機器を発売した企業が、製品の品質、有効性、安全性を確認するために法的に義務付けられた調査

グループを健全な成長に導く

報道等でご存知のことと思いますが、当社の完全子会社である(株)メディセオは、医療用医薬品の入札における独占禁止法違反の疑いがあるとして、2019年11月27日に公正取引委員会による立入り検査を、また、2020年10月13日には東京地方検察庁による捜索および公正取引委員会による立入り検査を受けました。株主の皆様をはじめ関係者の方々には、多大なご心配とご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。
メディパルでは、この事態を厳粛かつ真摯に受け止め、2020年6月25日付で、社長である私がグループコンプライアンス管掌の任に就き、「コンプライアンス委員会」を設置するなど、コンプライアンスの強化に向けた体制の整備を図りました。あわせて、私自身がグループ各社を訪問し、従業員と対話を行いながら、新たに制定した「企業活動指針」の浸透を図っています。
グループの健全な成長には、正しい競争により従業員の質的水準を上げ、企業に変革を起こし、顧客の喜びにつながることが必要であり、この一連の取り組みによって、さらなる企業価値の向上ができると考えています。常にステークホルダーの声に耳を傾け、ガバナンスの強化に活かし、私たちの事業を理解していただくべく対話をしていきたいと思います。

変化に流されず、変化を自ら生み出していく

コロナ禍における企業活動の変化、医療業界における制度や市場の変化、ESGやSDGsへの意識や目標に向けた取組みなど、事業を取り巻く環境が激変する中にあって、いまメディパルは転換点ともいうべき立ち位置にいると思います。私たちが持続的に成長していくためには、過去の延長線ではなく、「Change the 卸」による変革を加速させていくことが重要だと考えています。変化に流されるのではなく、変化を自ら生み出していく。ALCなどの盤石なインフラ、ARをはじめとする専門性の高い人材、多彩なパートナー企業との連携といったメディパルの強みを活かし、強固な収益基盤の確立と環境に配慮した事業を両立できる卸をめざしていきます。
世の中の動きや企業の在り方がどのように変わろうとも、「人を救いたい。お役に立ちたい」という思いや志がメディパルの根底にはあります。この志を持つ人材がいるからこそ、私たちはいかなる困難も乗り越え、新しいことに挑戦し続けることができるのだと思います。
「流通価値の創造を通じて人々の健康と社会の発展に貢献します。」の経営理念を実現していくために、自らの進むべき道を信じ、変革の歩みを続け、企業価値の向上に努めていきます。