事業開発本部長メッセージ

中期ビジョンの戦略に則り、
メディパル独自の取組みを推進。
目標達成の先を見越した
新規事業の在り方を追求

株式会社メディパルホールディングス
専務取締役 IR担当兼事業開発本部長

依田 俊英

新規事業のステージは“収穫期”へ

新規事業の2021年3月期の売上総利益は64億円と順調に進捗しており、引き続き業績に大きく貢献しました。とりわけ、スペシャリティ医薬品の開発支援と安定流通により、社会貢献と収益貢献の両立を図るPFM®*が、新規事業を牽引しました。
この10年で、PFM®を筆頭に、「創薬」「流通」「調剤薬局」「デジタル」などの分野で、間口を広げるべく積極的に種を蒔いてきましたが、ようやくそれらのうちのいくつかが実を結び、収穫の時期に来ていると実感しています。
同時に、新規事業に対する従業員の意識も大きく変わってきたと感じています。現場では、新規事業があることによるメディパルの優位性が認識され、取組みの意義が浸透してきました。また、人事考課の評価項目に新規事業への貢献度を加えたことにより、個々の取組みが適正に評価される仕組みを整えました。
その一方で、戦略的な投資を継続的に行うことの難しさも感じています。例えば、デジタルヘルスケア分野では次々とベンチャー企業が誕生しており、優良な投資対象企業を当社だけでスクリーニングするには限界となってきました。そこで、SBIホールディングス(株)の完全子会社であるSBIインベストメント(株)と、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)ファンドを共同で設立しました。これにより、国内外のベンチャー企業への投資および成長支援をさらに加速していくことが可能になりました。新規事業の取組みによって、「Change the 卸」は確実に進展してきました。これからも積極的な姿勢で新しい卸のビジネスを創造していきます。

PFM®:Project Finance & Marketing 医療用医薬品の開発投資を通じて、製薬企業とともにリスクとリターンを共有するビジネスモデル

PFM®:投資品目が業績に貢献

PFM®の2021年3月期の売上総利益は、JCRファーマ(株)やノーベルファーマ(株)の商品などが牽引し、前期比10億円増の48億円と好調な業績を上げることができました。
2003年創業の創薬企業であるノーベルファーマ(株)では、日本で唯一の低亜鉛血症治療薬である「ノベルジン錠」をはじめ、月経困難症治療剤の「ジェミーナ配合錠」や、小児期の神経発達症に伴う入眠困難の改善を効能・効果とした「メラトベル顆粒小児用0.2%」など、順調に製品ラインアップを拡大しています。JCRファーマ(株)も、メディパルと強力なパートナーシップで結ばれており、国内外において画期的な新薬の開発を順調に進めています。
このように、当社が製品開発に投資した医薬品は、まさに収穫期を迎えており、業績に貢献しています。

AR*:専門性を高め、さらなる社会貢献へ

AR活動は、製薬企業のMRが行っている情報活動を受託する事業です。現在は、そこからもう一歩進めて、希少疾病に特化したARを育成することにも取り組んでいます。新生児や小児の希少疾病は、診断が難しいという課題があります。診断の遅れは、治療開始の遅れにつながり、その後の成長に影響してしまいます。希少疾病の専門的な知識を持ったARが医療機関に対して啓発活動を行うことで、病気の早期診断に貢献できると考えています。
こうした活動は、収益を生み出すとともに、社会貢献にもつながり、ARの存在価値をさらに高めるものです。すでに、社内の組織や教育体制を整え、取組みを強化しています。

AR:Assist Representatives MR認定試験に合格したMS(医薬品卸売業の営業担当者)や薬剤師などに付与した社内呼称

使用成績調査(PMS):新会社設立による優位性の発揮

(株)ファルフィールドにPMS事業を集約

PMSを、新たな収益事業に発展させることをめざして、(株)ファルフィールドを設立しました。その狙いは独立性の担保と収益の見える化を図ることにあります。全国に約40名のモニターを配置し、機動的に活動することにより、最も効率的にデータが集められる会社として優位性を発揮できます。今後は、大学や研究機関と臨床研究事業の立ち上げを視野に入れるとともに、新会社の認知度向上にも取り組んでいきます。

GPSP省令(医薬品の製造販売後の調査および試験の実施の基準に関する省令)に基づく製造販売後調査および試験。

デジタル:デジタル・ヘルスケア・プラットフォームの構築

これまで、ICT企業との協業を推進し、母子手帳アプリ「母子モ(ぼしも)」や「CARADAオンライン診療」、医療情報ポータルサイト「Clinical Cloud by MEDIPAL」を展開してきました。現在では、それぞれのプロジェクトがつながり始め、生活者や医療機関を結ぶプラットフォームが構築できつつあり、メディパルの持つ既存のインフラと重なり合うようになってきました。今後、生活者の出生からの健康に関するデータが、パーソナル・ヘルス・レコード(PHR)といった形でまとめられ、健康管理や治療に活かされるようになっていくことも想定しています。
このような新しい医療の世界は、医療機関とのリアルなつながりを持つメディパルでなければ実現できないと考えており、今後はさらにデジタル・ヘルスケア・プラットフォームの構築に力を注いでいきます。

将来を見据えた戦略立案と積極投資

新規事業は、従来のビジネスの延長ではなく、既存のインフラや機能を活用し、これまでにない新しい価値を生み出す取組みです。成功に導くための入念な戦略立案と必要な投資を積極的に行っています。
2022年3月期には中期ビジョンの目標で掲げている新規事業による売上総利益100億円を達成する見込みです。今後もメディパルの将来を見据え、新規事業のさらなる成長シナリオを描いていきます。