社長メッセージ

メディパルグループは、「流通価値の創造を通じて人々の健康と社会の発展に貢献します。」の経営理念に基づき事業活動を行っています。
1898年(明治31年)、神戸で創業。その後、大正、昭和、平成、令和へと時代が変わり、世の中や生活様式が大きく様変わりする中において、志を同じくする企業とのM&Aによる事業領域の拡大、日本全国への流通ネットワークの構築、サプライチェーンの全体最適化など、常に先駆的な取組みを行ってきました。必要とされる商品を確実にお届けするという基本姿勢は125年を経た今でも不変です。
「人々の健やかな暮らしとは何か?」「そのために、私たちにできることは何か?」を問いかけ、さまざまな可能性を追求して、いかなる環境変化に直面しても人々の健康と社会の発展に貢献するという意志を持って事業を展開しています。

ライフラインを支え、流通価値を創造する

現在、当社グループは、「医療用医薬品等卸売事業」「化粧品・日用品、一般用医薬品卸売事業」「動物用医薬品・食品加工原材料卸売等関連事業」を展開しています。
医薬品、医療機器、臨床検査試薬、日用品、化粧品、食品加工原材料など、私たちの取り扱う商品は、いずれも人々の生命や健やかな暮らしを支えるために欠かせないものばかりです。それゆえ、平時のみならず、たとえ有事が起きても、止まることなくお届けできる物流機能と流通ネットワークの構築は、社会インフラを担うものとして大事な取組みであると認識しています。この思いの根底には、1995年の阪神・淡路大震災の経験があります。被災エリアの真っただ中で従業員を守りながら、命を支える商品の供給を継続することがいかに尊いかを痛感しました。この経験を未来に活かすためにめざしてきたのが、医療用医薬品等卸売事業における全国物流構想です。
この国には、どんな時でも安定供給を可能とする強靭な物流機能と日本全国をカバーできる流通体制が必要であると考えました。2000年の医療用医薬品卸3社の合併以降、医薬品卸としての全国展開を実現した後、この構想を着実に進めてきました。2023年9月に13か所目となる「阪神ALC」(兵庫県西宮市)の竣工により、全国均質な物流サービス網が完成します。
有事を想定したり、時代の先を見据えたさまざまな準備は過剰な投資なのではという意見もありましたが、大事なものは普段は目に見えず、必要になって初めて気づくものです。これからも、社会に対して、安全・安心で安定した価値ある流通を提供する卸として、私たちは変革を続けていきます。

※ALC:Area Logistics Center 医療用医薬品や医療材料、臨床検査試薬などを扱う高機能物流センター。主に調剤薬局、病院、診療所などに商品を供給

医療と健康、美

日本は世界に誇れる長寿国です。その一方で、社会保障費の増加が大きな問題となっています。この相反する課題を見据えて、病気になる前、つまり未病・予防の領域で、私たちの存在や機能が活かせるのではないかと考えています。「医療と健康、美」という広い事業フィールドに目を向ければ、例えば生活習慣の改善、生活に便利や快適を与える日用品、体に良くておいしい食事、また美容への気配りや、ペットとの暮らしなど、人々が心身ともに健やかに暮らせるさまざまなシーンに寄り添うことができます。
そのような思いを描き、私たちのありたい姿を、「『医療と健康、美』を広げ、支え、つなぐ健康応援オーケストラ」と表現しています。
従来の卸売事業の枠組みにとらわれず、革新的な製品の開発やベンチャー企業への支援などを積極的に行い、私たちとの事業との相乗効果でお役に立てる分野の拡大に努めています。

メディパルの強みの一つは、強固で広範囲なネットワークであり、人とのつながりです。これは、モノを効率的に流通させる物流面だけではなく、多くの企業・顧客・自治体などをつなぐ役割も果たしています。“人と人”をつなぐことができる強みを活かすことで、新たなニーズを掘り起こし、今までなかったような新たなビジネスチャンスが生まれると考えています。

2027メディパル中期ビジョン

社会環境や顧客ニーズの変化に伴い、企業グループとして収益性や成長性を高めていくためには、事業の幅を大きく広げていく成長戦略が必要だと考えています。
現在、メディパルでは、「2027メディパル中期ビジョン Change the 卸 Forever ~たゆまぬ変革を~」に沿った取組みを進めています。本ビジョンは、メディパルの描く「ありたい姿」を実現する道筋として位置づけていますので、数値的な目標の達成だけではなく、変革を進めてグループを進化させていくことが重要だと考えています。あわせて地球規模の喫緊の課題である環境問題への取組みにも力を入れていきます。物流面においては、環境負荷の低減を伴う効率化を推進する一方で、遺伝子治療や再生医療をはじめとする革新的な医薬品の温度や振動などを厳格に管理できる高度な物流機能の強化にも力を入れています。本ビジョンでは、人材戦略と財務戦略をベースにして、5つの成長戦略を掲げたうえで、事業ポートフォリオのシフトとパートナーとの協働により、社会価値・顧客価値を創造し、グループの持続的成長をめざしています。
本ビジョン1年目は、JCRファーマ(株)との超希少疾病4疾患に対するグローバル事業化の合意、(株)メディスケットの設立、MP五協フード&ケミカル(株)、東七(株)のグループインなど、メディパルグループの未来を切り拓いていくうえで重要な布石を打ちましたので、まずは順調にスタートすることができたと思っています。

変革を実現する人材戦略

だれもが心身ともに健やかに暮らせる社会の実現と企業価値の向上をめざすには、多様な知識や経験、価値観を持つ従業員が、それぞれの個性や能力を磨き、調和させていくことが必要だと考えています。それぞれの個性が重なりあうことで新しい価値を生み出す、まさにグループ全体がオーケストラのような姿でありたいと思っています。
メディパルの成長を支えるのは、人材です。メディパルでは未来を担う人材像を「未来志向型人材」と定義し、そのような人材を育成していくための投資を積極的に行い、「創造性豊かな企業文化の醸成」および「多様な人材活躍」を促す施策を実践していきます。私は、メディパルの従業員は経営理念に共感して集い合った縁ある仲間だと思っています。全員が生き生きと働き、世の中のお役に立ち、プライベートも充実した生活を送ってほしいと心から願っています。そのためにも、働きやすい環境づくりや健康管理のサポート、福利厚生の充実などには力を注いでいきます。
従業員の成長が会社の成長につながり、会社が成長していくことで、新しいビジネスへの挑戦の機会が生まれ、それによって従業員がまた成長していく。このような成長戦略と連動した人材戦略を推進しています。

資本政策に関する基本方針

2023年5月に「資本収益性の向上」と「資本コストの低減」を両輪とした事業・財務活動を通じて、企業としての持続的成長と企業価値最大化に努めることを資本政策の基本方針としました。
また、この方針に則り、「政策投資株式に関する基本方針」と「利益配分に関する基本方針」の策定も行いました。政策投資株式については、株式保有リスクの抑制や資本効率性の観点から、その残高を削減することとし、現在進行中の中期ビジョンの最終年度となる2027年3月末をめどに、保有残高を純資産の10%以下、かつ、500億円以下まで削減する方針です。
利益配分については、原則として「本中期ビジョンに掲げた成長投資に伴い発生するのれん償却費・無形資産償却費控除前の利益に対する配当性向を安定的に維持・向上させる」こととあわせ、資金需要を総合的に見極めながら、資本効率の向上と株主の皆様への一層の利益還元を目的とした「自己株式の取得・消却」を弾力的に実施する方針を決定しました。本ビジョン期間の5年間累計で掲げた成長投資に伴い発生するのれん償却費・無形資産償却費控除前の利益に対して株主総還元性向40%の実現を図ってまいります。
今回の資本政策は、IR活動で得た株主や投資家のご意見、社外取締役などの意見も参考にしながら、活発な議論をくり返したうえで策定しました。資本コストや資本収益性を意識した経営を実践していくとともに、開示のより一層の充実や、株主や投資家の皆様との対話を積極的に行っていきたいと考えています。
安全性と効率性を両立する健全な財務状況を模索していくことと同時に、積極的で機動的な成長投資などにより、将来の収益を最大化する取組みにも注力することで企業価値を向上させ、株主を含むステークホルダーの皆様の期待に応えることのできる企業として成長を継続していきます。

サステナビリティ経営の推進

持続可能な社会の実現と、企業価値の向上の両立をめざすため、サステナビリティ方針「未来へつなごう『元気と、かがやき』」を策定しました。
この方針のもと、重要課題(マテリアリティ)の見直しを行い、6つの課題を特定しました。グループのCSR委員会が中核となり、社会課題の抽出、自社課題の洗い出し、あるべき姿の議論をし、検討してきたものを取締役会に諮り策定したものです。
企業は社会を構成する一員であり、よりよい社会の実現に対して貢献していく責務があると考えています。メディパルの事業は、それ自体が社会的な意義の大きいものであると自負していますので、地球環境や人権に対しても高い意識を持った人材、会社に育てていきたいと思います。
また、健全で透明性の高い企業経営のため、グループコンプライアンスの強化とガバナンス体制の構築にも力を注いでいきます。グループ全体での教育をさらに充実させるとともに、取締役会においても、コンプライアンスの遵守状況をモニタリングする仕組みを構築し、コーポレート・ガバナンスの一層の充実を図っていきます。

「ありたい姿」の実現に向かい、たゆまぬ変革を進める

「夢みて行い、考えて祈る」これは、臨床免疫学者で大阪大学の総長も務められた山村雄一さんの言葉です。
何事も、夢を見ることから始まります。そしてまず行動を起こすこと。行動を起こした後には、その結果や浮かび上がった課題をしっかりと検討し、改善策を講じ、やることをやり切る。自分たちの信念を持ち、貫くということが先行きの見えない今の時代には必要ではないかと思います。
メディパルの事業フィールドである「医療と健康、美」は、とても幅広く、成長性に富んだ恵まれたものです。そして、人々の心身ともに健やかな暮らしに貢献することのできるやりがいのある仕事がたくさんあります。ステークホルダーの皆様のご期待に沿い、ともに明るい未来を切り拓いていくために、メディパルはたゆまぬ変革を進めていきます。

株式会社メディパルホールディングス

代表取締役社長 渡辺 秀一