社外取締役座談会

メディパルホールディングスのガバナンス体制、取締役会の実効性、そして今後の当社グループの企業価値向上について、社外取締役に語っていただきました。

当社のガバナンス体制について

岩本:ガバナンスで重要なことは、まずは取締役会が高い実効性を持ち、議論が尽くされること、そしてその結果を執行側がしっかりと受け止め、次の段階に正しく進めることだと思います。その意味では、当社は、社内および社外の取締役が活発に意見を交わす、実効性の高い取締役会であると捉えています。実効性の高さは、議長である渡辺社長のリーダーシップに負うところも大きく、執行側への橋渡しが十分になされていると理解しています。

昌子:取締役会での議論において、社内外の取締役だけではなく、社内外の監査役の方々も積極的に発言されている点を私は高く評価しており、より健全で強固なガバナンスに向かっていることを実感しています。課題として感じているのはグループガバナンスです。持株会社である当社の社外取締役として、グループ会社に対してガバナンスをどう効かせていくべきかといった点を、今後はもっと突き詰めて考えていきたいと思います。この点が個人的には道半ばといった評価です。

浅野:当社のガバナンスは健全だと考えています。過去に起こしたコンプライアンスにかかる不祥事については、二度と起こさないということを宣言し、真摯に取り組んでいることが、その証です。ガバナンスの面で重要なことは、起こしてしまった不祥事に対して取締役会としてしっかり対応をすることだと思います。さらに重要なことは、未来に向けて、誠実な企業文化を根づかせること、過ちを起こしてしまった事実を風化させないための取組みを継続していくことです。当社グループは、こうした取組みを逃げずに着実に進めていると思います。

加々美:当社のガバナンスシステムは確実に強化されていると思います。過去からの流れを追うと、2017年には、取締役会での議論をより充実させることを目的として、重要議案の事前説明会が始まりました。これによって、社外監査役も含め、取締役会での議論が非常に活発化したと思います。また、2020年には、取締役会の諮問機関としてコンプライアンス委員会が設置され、グループコンプライアンスの推進と継続的モニタリングが行われています。同時に、監査室とコンプライアンス統括室の担当者が各現場を訪れ、取組み状況の確認や従業員のコンプライアンス意識の向上に努めています。今後は、持株会社である当社が、グループ全体としてのコンプライアンス、ガバナンスを一層強固なものとすることが重要だと考えています。

取締役会の実効性について

岩本:コンプライアンス、ガバナンスの強化に加えて、リスク管理についてもしっかり議論していくことが重要であると捉えています。持株会社である当社が管理すべき重要なリスクはたくさんあります。今後は、スコープを定めて、バランスよく議論を進めていくことも考慮すべきです。持株会社の取締役会として、グループ全体の中長期的な成長戦略についての議論に軸足を移していくことも必要です。海外事業や新規事業などの進捗状況や課題についても網羅的に把握し、監督すべきです。取締役会の運営に関しては、活発な議論がなされていることの裏返しで、どうしても時間が超過してしまう点は課題かもしれません。

浅野:執行に関わる議案を少なくしようという試みはこれまでも進めてきたのですが、会社法で定められている部分もあり、議案数をこれ以上減らすことは現実的には難しいかもしれません。とはいえ、運用面での工夫の余地はあるようにも思います。例えば、中期ビジョンの進捗状況など、深い議論が必要な案件については、あらかじめ時間を設定し、議論を優先させるべきかもしれません。報告事項でも決議事項でもない、ディスカッション事項を定めて時間を確保するということです。

昌子:議論の時間を確保することは非常に重要です。中長期のビジョンなどは、深い議論に基づき、必要な時間をとり作成していくべきと考えています。その意味では、昨年は「ありたい姿」や「2027メディパル中期ビジョン」の作成にあたり、十分な議論を尽くすべきであり、生煮えの状態で見切り発車すべきでないという意見があり、開示の時期を春から秋に先送りにすることとなりました。その結果、深い議論のプロセスを踏んだうえで的確な中長期ビジョンが作成でき、非常に良かったと思っています。

2027メディパル中期ビジョンの実現に向けて

加々美:中期ビジョンで掲げる成長戦略の推進をより確実にするため、取締役会として戦略上重点となる新規事業や出資先・パートナーとの共同事業をモニタリングし、その進捗を定期的に評価することが重要と考えます。また、大規模な投資の際には、その投資がグループ全体の収益にどのようなインパクトをもたらすのか、どのような課題があるのかを確認し決定後もその経過を適宜追っていくことが大切です。取締役会において、こうした投資案件などの進捗を社外取締役としてどう監視していくのかという点は、重要な課題と考えています。

浅野:中期ビジョンの1年目が経過したので、執行側が中期ビジョンの進捗をどう捉え、どこが課題であると認識しているのかを議論・共有する必要があります。このことをぜひ、取締役会のアジェンダにしていただきたいと思っています。執行側は非常に意欲的に中期ビジョン達成に向けて取り組んでいるので、その成果を見極めたいところです。

昌子:新規事業への取組みについては、年2回、その進捗と評価について議論をすることになっています。進捗の分析については、科学的に、定量的にモニタリングを行っていくべきです。さまざまな変化が起きている中で、PDCAを回していくことも含め、経営を科学的に捉えていくことが、これまで以上に重要になってきます。

岩本:中期ビジョンにおけるキーワードの一つに「事業ポートフォリオのシフト」があります。新規事業の進捗をモニタリングしていくことは、事業ポートフォリオの変革をどう進めていくべきかという議論につながります。今推進している戦略、事業ポートフォリオのシフトが正しく進捗しているのかについて取締役会として適切に判断するためには、事業グループごとの資本コストを認識したうえで、定量的に可視化して進めていく必要があります。

企業価値の向上に向けて

加々美:当社グループは今まさに事業の変革に向けて動き出しています。その変革が、正しい道筋を辿って進むようそして社外の方々から高い評価を得られるように、社内の慣習や風土から離れた立場にある私たち社外取締役も適切な助言をしていく必要があると感じています。一方で、コンプライアンスの問題は終わりのない問題です。今がゴールではなく、常に心がけていく必要があります。このことを忘れず、社外取締役としての責任を果たしていく考えです。

昌子:当社グループが世の中から尊敬され、持続可能な社会に貢献できる会社となることをめざすことが必要だと考えています。すべてのステークホルダーの皆様を意識して、だれの目から見ても、存在価値のある良い会社をめざしてほしいと思います。私は社外取締役として、そのためのサポートを全力で行っていきます。

岩本:株主や投資家の期待に応えるべく経営を監視することは、社外取締役としての重要な役割です。そのために、執行側の方々との適正な関係を保ちながら、執行の進捗や課題についての正しい情報を提供してもらい、さまざまなステークホルダーの利益を考えながら、戦略や経営の妥当性を判断していきます。そのことが結果的に長期的にみた企業価値の向上につながると考えています。「この国で、薬を届けるという使命。」、これこそが当社の使命です。この使命を全うするための「医療と健康、美」という事業フィールドの設定であり、新規事業、海外事業の拡大だと理解しています。このことを胸に刻み、社外取締役としての責任を全うしていきたいと思います。

浅野:当社は事業ポートフォリオの変革に取り組み、「たゆまぬ変革」を続けることで、強靭な企業グループへと変わっていきます。私たち社外取締役も掲げている目標の達成に向けた努力はもちろん惜しみません。株主・投資家をはじめとするステークホルダーの皆様には、当社が持つ魅力や本質の部分をよく見ていただき、当社の持続的成長、社会課題への取組みに大いに期待していただきたいと思っています。