気候変動(TCFD提言に基づく情報開示)

TCFD

メディパルグループは、「医療と健康、美」の事業フィールドで卸売業を主たる事業としており、人々の生命や健やかな暮らしを支えるのに欠かせない商品をお届けしています。また、メディパルグループの事業は、自動車などを使用した物流が不可欠であることから、より環境に配慮した流通体制を構築することが重要な課題と捉えています。
こうした中で、メディパルグループは2022年10月にTCFD提言に賛同しました。今後は外部調査や内部分析を踏まえ、TCFD提言に沿って、より精度を高めた開示に努めるとともに、財務に影響するリスクおよび機会を織り込んだ経営計画をもとに事業を継続し、持続可能な社会の実現に貢献します。

  • ※ TCFD:気候変動によるリスクおよび機会の財務的影響を把握し、開示することを推奨しているタスクフォース

1.ガバナンス

メディパルグループでは、気候変動対策を重要な経営課題の一つとして位置づけています。グループ全体の気候変動に関わるリスクと機会への対応方針や施策、中長期における温室効果ガス排出量の削減目標などの重要事項について、サステナビリティ経営を推進するCSR委員会で議論しています。審議した内容は担当取締役(CSR委員会 委員長)から取締役会に上程し、決議しています。連結子会社は決定された気候変動対策に関連する方針に基づき、担当部門主導のもと施策を実行し、具体的な内容や進捗をCSR委員会に報告しています。担当取締役はその内容を定期的(年2回程度)に取締役会に報告することで、取締役会の監督が適切に図られる体制を整備しています。

1.ガバナンス

2.戦略

メディパルグループでは、国際エネルギー機関(IEA)や、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数のシナリオ※1を参照し、今世紀末までの平均気温が産業革命以前と比べて「2℃未満」「4℃」上昇するという異なる2つのシナリオで事業インパクトを評価しました。また、気候関連リスク・機会に対するメディパルグループ戦略のレジリエンスを評価することを目的として、シナリオ分析を実施しました。
分析の結果、2℃未満シナリオでは、炭素税などの導入に伴うコスト増加や再生可能エネルギーの需要増による調達不足および調達コストの増加などのリスクが高まる一方で、エシカル商材や代替食品、健康食品などの需要拡大が見込まれると想定しています。また、4℃シナリオでは、防災機能を高めるための設備投資費用の増加や、自然災害による営業・物流拠点などの損害や操業停止、交通麻痺などによる配送遅延、供給網への被害などのリスクが想定されます。しかし、メディパルグループでは平時から大規模災害などのさまざまなリスクを想定し、1つの物流センターが供給できない状況でも、他の物流センターから配送を補完するバックアップ体制を整えています。2020年7月に発生した熊本県を中心とする記録的な大雨の際は、被災した地域に社員を派遣して復旧支援活動を実施するとともに、近隣の物流センターよりお得意様へ商品を直接配送することで、安定供給を維持しました。そのようなことから、メディパルグループの気候変動に起因した自然災害による2031年3月期時点でのリスクの影響は僅少であると考えています。一方、機会においては安定供給を維持する物流基盤の構築や品質管理(GDPガイドライン)に準拠した業務手順の徹底により需要拡大が見込まれると想定しています。
いずれのシナリオにおいても、一定のコスト上昇が見込まれることはリスクとして捉えていますが、メディパルグループが築き上げてきた高度な物流機能を活かすチャンスでもあると考えています。
現在、気候変動に関する課題解決に貢献するため、「医療と健康、美」の事業フィールドにおいて、お得意様と協働した新たな医薬品流通最適化モデルの構築や中間流通機能の強化およびステークホルダーとの連携・協働を通じて、サプライチェーン全体での流通最適化・効率化に取り組んでいます。
なお、財務への影響については今後の検討課題として認識しており、想定される影響を踏まえた対応策の検討をさらに深めていくとともに、シナリオ分析を進めていく予定です。

リスクと機会

区分 内容 影響度※2
2℃未満 4℃
移行リスク 政策
・法規制
炭素税・排出量取引制度などの政策導入
  • 自社排出分に対する炭素税の課税
  • 排出枠超過分の排出権購入費用の発生
  • メーカーや配送業者に炭素税などの規制が適用され、価格転嫁が進むことによるコストの増加
市場 エネルギー価格の変化
  • 再生可能エネルギーの需要増に伴う、調達不足および調達コストの増加
評判 ステークホルダーからの懸念の増加
  • 気候変動対応への取組み遅延による信頼低下(取引縮小、環境負荷を考慮した取引卸の選定に伴う商機の喪失など)
物理的リスク 慢性 洪水・気象パターンの変化
  • 商品の温度管理機能を高めるための車両関係および空調設備などへの設備投資費用の増加
  • 医療用医薬品など温度管理商品の取り扱いの難易度の上昇
  • 気温上昇による季節商品(冬物)などの需要減少
  • 農作物、水産物、畜産物などの原材料価格の高騰や調達難(仕入原価の上昇)
急性 異常気象の激甚化(台風・洪水など)
  • 防災機能を高めるための設備投資費用の増加
  • 営業・物流拠点などの損害・操業停止、交通麻痺などによる配送遅延、供給網への被害
機会 販売機会の増加
  • 生活者のエシカル消費ニーズの拡大
  • 代替食品や健康食品の需要拡大
  • 気温上昇による季節商品(夏物)などの需要増加
  • 災害対策商品の需要増加
相対的競争力の上昇
  • 環境に配慮した流通モデルの構築へのニーズ上昇
  • ローコスト物流網へのニーズ上昇
  • 安定供給を維持する物流基盤へのニーズ上昇(BCP対策・GDPガイドラインに準拠した業務手順の徹底・全国物流センター網など)
区分 内容 影響度※2
2℃
未満
4℃
移行リスク 政策
・法規制
炭素税・排出量取引制度などの政策導入
  • 自社排出分に対する炭素税の課税
  • 排出枠超過分の排出権購入費用の発生
  • メーカーや配送業者に炭素税などの規制が適用され、価格転嫁が進むことによるコストの増加
市場 エネルギー価格の変化
  • 再生可能エネルギーの需要増に伴う、調達不足及び調達コストの増加
評判 ステークホルダーからの懸念の増加
  • 気候変動対応への取組み遅延による信頼低下(取引縮小、環境負荷を考慮した取引卸の選定に伴う商機の喪失など)
区分 内容 影響度※2
2℃
未満
4℃
物理的リスク 慢性 洪水・気象パターンの変化
  • 商品の温度管理機能を高めるための車両関係および空調設備などへの設備投資費用の増加
  • 医療用医薬品など温度管理商品の取り扱いの難易度の上昇
  • 気温上昇による季節商品(冬物)などの需要減少
  • 農作物、水産物、畜産物などの原材料費の価格高騰や調達難(仕入原価の上昇)
急性 異常気象の激甚化(台風・洪水など)
  • 防災機能を高めるための設備投資費用の増加
  • 営業・物流拠点などの損害・操業停止、交通麻痺などによる配送遅延、供給網への被害
区分 内容 影響度※2
2℃
未満
4℃
機会 販売機会の増加
  • 生活者のエシカル消費ニーズの拡大
  • 代替食品や健康食品の需要拡大
  • 気温上昇による季節商品(夏物)などの需要増加
  • 災害対策商品の需要増加
相対的競争力の上昇
  • 環境に配慮した流通モデルの構築へのニーズ上昇
  • ローコスト物流網へのニーズ上昇
  • 安定供給を維持する物流基盤へのニーズ上昇(BCP対策・GDPガイドラインに準拠した業務手順の徹底・全国物流センター網など)
  • ※1 参照した主なシナリオ:IEA WEO 2021(APS、STEPS)、IPCC(RCP2.6、RCP8.5)
  • ※2 影響度については、3段階で定性的に表示しています。
    大:事業戦略への影響または財務的影響が大きいことが想定される
    中:事業戦略への影響または財務的影響が中程度と想定される
    小:事業戦略への影響または財務的影響が小さいことが想定される

<参考>各シナリオで想定される世界観

2℃未満シナリオの世界観
4℃シナリオの世界観

3.リスク管理

メディパルグループの事業が気候変動によってどのような影響を受けるのかを把握し、そのリスクと機会を特定しています。特定したリスクと機会はCSR委員会で協議を行い、案件に応じて取締役会に報告・提言を行います。
また、医薬品、日用品など、健やかな暮らしに欠かせない商品の流通を担うメディパルグループは、「止まらない物流」の観点で、物理的リスクへの早期対応を行っています。有事の際でもすぐに供給活動を行うためのBCP(事業継続計画)を策定し、必要とされる商品を確実にお届けするために、さまざまな対策を施しています。

4.指標と目標

(1)温室効果ガス排出量削減目標

気候変動への取組みを評価するための指標として温室効果ガス排出量(Scope1※1・Scope2※2)を用い、グループ全体で

2030年度 50%削減(2020年度比)

2050年度 カーボンニュートラル

という目標を掲げています。

温室効果ガス排出量
  • ※1 自社の燃料使用に伴う排出
  • ※2 自社の電力使用に伴う排出

(2)今後の取組み

メディパルグループは、「医療と健康、美」の事業フィールドにおいて、既述の気候変動に伴うリスクと機会に対応することが重要であると考えており、今後の対応策として下記の取組みを予定しています。

対応策

  • 環境配慮型電力への切り替えなど再生可能エネルギー利用量の拡大
  • 太陽光パネルなど再生可能エネルギーを利用した自家発電設備の導入
  • 節電などエネルギー効率化の取組み強化
  • 車両台数や配送回数の削減
  • 営業車両、配送車両の電気自動車への切り替え
  • ドローンの活用など持続可能な流通の実現に向けたサプライチェーンマネジメントの実施
  • 異常気象を想定した災害対策マニュアルの見直しおよび災害対策訓練の実施
  • 気候関連情報開示の充実
  • 従業員の環境保全意識向上施策の実施