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2024.04.01
医療・疾患情報
- #ライソゾーム病
- #ムコ多糖症III型
- #サンフィリッポ症候群
ムコ多糖症III型(サンフィリッポ症候群)
- ムコ多糖症とは
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ムコ多糖症は、「ライソゾーム病*」と呼ばれる病気の一つです。
生まれつき「ムコ多糖」という物質の分解に必要な酵素のはたらきが弱く、分解されなかった「ムコ多糖」がからだにたまることで発症します。*ライソゾームは「からだのごみ処理工場」と呼ばれる細胞内小器官の一つで、さまざまな酵素を使って、からだの中の不要なものを分解しています。また、最近ではただのごみ処理ではなく、様々な細胞機能に関わっていると言われています。ライソゾーム病は、ライソゾーム内の酵素がうまくはたらかないことで、不要なものがからだにたまっていき、さまざまな症状を引き起こす病気です。現在、60種類の疾患が確認されており、日本の指定難病には31種類の疾患が登録されています。
ムコ多糖の分解に必要な酵素は10種類以上存在します。そのうち、どの酵素のはたらきが弱いかなどによって、いくつかのタイプに分けられます。
ムコ多糖症について詳しく知りたい方はこちらをご参照ください。
ムコ多糖症.com https://mps-jcr.com/ - ムコ多糖症III型(サンフィリッポ症候群)とは
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ムコ多糖症III型は、ムコ多糖の一つである「ヘパラン硫酸」の分解に必要な酵素を生まれつき持っていなかったり、分解するはたらきが弱かったりすることで発症する病気です。
- 病型(病気のタイプ)
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ムコ多糖症III型は、原因となる酵素の種類によって、「A~D型」の4つに分けられます。いずれも「ヘパラン硫酸」の分解にかかわる酵素であり、ヘパラン硫酸がからだにたまることで、さまざまな症状があらわれます。
- 病型
- 原因酵素
- ムコ多糖症IIIA型
- ヘパランN-スルファターゼ
- ムコ多糖症IIIB型
- α-N-アセチルグルコサミニダーゼ
- ムコ多糖症IIIC型
- アセチル-CoA:α-グルコサミニドN-アセチルトランスフェラーゼ
- ムコ多糖症IIID型
- N-アセチルグルコサミン-6-スルファターゼ
- 症状
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患者さんによって発症年齢や重症度はさまざまですが、一般的には以下のような症状がみられます。
- 診断
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ムコ多糖症の特徴的な症状がみられ、ムコ多糖症である可能性がある場合、X線、尿中のムコ多糖、血液や細胞の酵素活性、遺伝子の検査などを行い、診断を確定します。
なお、ムコ多糖症III型は、他のムコ多糖症でみられる特徴的な症状(低身長・特徴的な顔つき・骨や関節の変形など)が比較的軽度なため、診断が難しく、確定診断が遅れることが多い病気です。
ことばの発達の遅れや多動がみられるため、自閉症スペクトラム障害(ASD)や
注意欠如・多動症(ADHD)を疑われることが多いようです。 - 治療
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2024年4月現在、ムコ多糖症III型の適応を持つ治療薬はありません。けいれんに対して抗けいれん薬を用いるなど、症状に合わせて治療法を検討します。
- 予後
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一般的に、ライソゾーム病は細胞内に不要な物質がたまるにつれて、徐々に病気が進行します。
ムコ多糖症III型は、進行性で致死性の重篤な疾患であり、多くは10歳代で寝たきりとなります。ムコ多糖症III型について、より詳しく知りたい方はこちらをご参照ください。
小児慢性特定疾病情報センター ムコ多糖症III型 https://www.shouman.jp/disease/details/08_06_077/
監修:琉球大学大学院 医学系研究科育成医学(小児科)講座 診療教授 知念 安紹先生
参考資料
- 厚生労働難治性疾患政策研究事業ライソゾーム病(ファブリー病を含む)に関する調査研究班 編. 診断の手引きに準拠したムコ多糖症診療マニュアル. 診断と治療社. 2016.
- 厚生労働難治性疾患政策研究事業ライソゾーム病(ファブリー病を含む)に関する調査研究班 編. ライソゾーム病・ペルオキシソーム病診断の手引き. 診断と治療社. 2015.
- ムコ多糖症III型. 小児慢性特定疾病情報センター (https://www.shouman.jp/disease/details/08_06_077/)(2024年3月1日閲覧)
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