一人でも多くの人に知ってもらうために。患者さんと医師をつなぐために。
メディパルホールディングス、希少疾患啓発の取り組み
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メディパルグループは、患者数が極めて少ない病気の総称である『希少疾患』に対してさまざまな取り組みを行っています。その中の一つである啓発活動について、株式会社メディパルホールディングス事業開発本部 製薬・グローバル事業開発部の大沼真季(写真左)と若菜遥(写真右)に話を聞きました。
株式会社メディパルホールディングス
全国にグループネットワークを広げ、「医療と健康、美」の事業フィールドにおける流通とサービス事業を展開しています。医薬品、化粧品・日用品などの日々の生活に欠かせない商品を届け、持続可能な社会の実現に向けて価値を提供することで社会に貢献しています。
希少疾患への取り組みは、経営理念に合った活動
そもそもメディパルグループは、なぜ、希少疾患に対して取り組むのでしょう?
私たちは、「流通価値の創造を通じて人々の健康と社会の発展に貢献します。」という経営理念の下、人々の健やかな暮らしに貢献するべくさまざまな事業活動を展開しています。そして、誰もが心身共に健やかに暮らせる社会の実現に向け、誰一人取り残すことなく、必要な人に必要なものを確実にお届けし続けることに挑戦しています。
希少疾患は患者さんが少ないため、疾患の実情が理解されていないケースが多く、一般的な病気と比べて、医薬品や治療法の開発が進みづらいという課題があります。こうした課題に向き合い、患者さんやそのご家族のお役に立つことは、私たちの経営理念を体現する重要な活動であると考えています。
また、メディパルグループは将来を担う子どもたちを支援するための社会貢献活動にも積極的に取り組んでいます。希少疾患は小児の患者さんも多くいらっしゃいますので、希少疾患ゆえに生じるさまざまな課題に取り組むことは、子どもたちの健やかな未来を支えたいという私たちの思いと深く重なっています。
メディパルグループでは、これまでどんな取り組みを行ってきましたか?
医薬品の流通を担う企業として、超低温管理物流技術の開発や、患者さんのご自宅への医薬品配送体制の構築に取り組んでいます。
また、流通のみならず、製薬企業への開発支援(PFMⓇ ※)、さらには医薬品メーカーとの新薬の共同開発など、研究開発分野へも挑戦の幅を広げてきました。
社会貢献活動としては、RDD(Rare Disease Day、世界希少・難治性疾患の日)の国内イベント「Rare Disease Day in Japan」に継続して協賛しており、グループ従業員もボランティアとしてイベント運営に参加しています。
こうした活動の一環として、大沼と私が関わっているライソゾーム病の啓発活動があります。
※Project Finance & Marketing:医療用医薬品の開発投資を通じて、製薬企業とともにリスクとリターンを共有するビジネスモデル
広く知られていないからこそ、継続的に啓発活動を行うことがとても重要
希少疾患において、啓発活動が重要である理由を教えてください。
疾患の社会的認知度を高めることが、患者さんが適切な医療や支援に辿り着くまでの「情報の空白」を埋めることにつながるからです。
希少疾患は、患者さんやそのご家族はもちろん、医療従事者にさえ十分に知られているとはいえず、診断が確定するまでに長い時間がかかってしまうケースも少なくありません。また、やっと診断がついたとしても、疾患について知っている人が周囲にいないことが多く、誰にも相談できず孤立してしまう方もいらっしゃいます。お住まいの地域によっては専門医がいる医療機関の数が限られており、気軽に相談や通院をすることが難しいという現状もあります。
こうした中、継続的な情報発信や疾患啓発活動を行うことは、希少疾患の社会的な認知度を高めるだけでなく、まだ診断されていない患者さんを適切な医療へつなげる一助になるという点で、とても重要な取り組みであると考えています。
メディパルグループでは、これまでどんな啓発活動を行ってきましたか?
2023年に「希少疾患とともに歩むみんなの情報サイト(以下、情報サイト、https://www.medipal.co.jp/rare-disease/)」を開設しました。「あなたの笑顔でかがやく世界へ」をテーマに、希少疾患の患者さんとそのご家族の笑顔のための情報を発信しています。
私たちが注力している「ライソゾーム病」には、患者さんが極めて少ない「超希少疾患」と呼ばれる疾患も含まれています。情報サイトを開設した当時、これらの超希少疾患に関する患者さん向けの日本語の情報はウェブ上にほとんどない状態でした。そのため、まずはこのような疾患の正確な情報を届けることから始めました。
情報サイトを通じた社外向けの発信に加え、メディパルグループの従業員に向けた「社内疾患啓発活動」にも力を入れております。
2023年後半から本格的に活動を開始しました。最初はまさに試行錯誤の状態でしたが、「まずは従業員一人一人に希少疾患を知ってもらうこと」を目標に、さまざまな取り組みを進めています。
具体的には、特定の希少疾患の認知向上を目的としたチャリティーウォークの開催や、2月のRDDに合わせたドキュメンタリー映画の社内上映会、さらには従業員向け特設ポータルサイトを活用した希少疾患の情報発信などが挙げられます。
正確にわかりやすく、不安を煽らない内容にしなくてはならない
お二人は、この取り組みにおいてどんな業務を行っていますか?
私は情報サイトの企画・運営全般を担当しています。具体的には、コンテンツの企画立案、記事の執筆・校閲、そして公開に至るまでの制作進行管理などが主な業務です。
記事の制作は部内のメンバー全員で分担していますが、医学的な専門性が高い記事は、必ず専門医に監修を依頼し、正確な情報発信に努めています。
私は年間を通じて、従業員向けの希少疾患啓発イベントの企画・運営をしています。企画立案やイベントの開催、運営などは、部のメンバーと協力しながら進めています。
活動の中で、難しいと思うのはどんなところでしょう?
情報の「正確さ」と「伝わりやすさ」、「患者さんやご家族の心情への配慮」をすべて満たす発信をすることです。
私は、以前社内で医薬品情報を発信する業務を担当していました。薬剤師など医療従事者向けの情報は専門用語を使って正確に伝える一方で、営業担当者にはニュアンスは保ちつつもより伝わりやすい言葉を選び、ポイントを絞って伝えるなど、「正確性とわかりやすさ」の両立は当時からずっと向き合ってきた課題でした。
現在運営している情報サイトは、患者さんやそのご家族が対象ですので、わかりやすさに加えて心情への配慮が求められます。特に希少疾患は、風邪などの一般的な病気と異なり、病気に対する知識を持たない状態で情報を受け取る場合がほとんどです。そのため、読み手が記事の内容でショックを受けたり、過度な不安を抱いたりすることがないよう、一文一文と真剣に向き合いながら記事を作成しています。
最も難しいと感じているのは、業務で希少疾患と直接的な関わりのない従業員も多いなかで、どのようにすれば関心を持ってイベントに参加してもらえるかという点です。
2023年に、初めてRDDに合わせて希少疾患に関する子どもたちのドキュメンタリー映画の上映会を社内で実施しましたが、当時はなかなか参加者が集まりませんでした。
しかし、イベント後のアンケートでは、「内容への関心は高かったものの、上映のタイミングに業務が重なり視聴できなかった」という回答が多く寄せられました。そこで、従業員に関心がないわけではなく、運営方法の工夫が必要だと痛感し、これを翌年の改善課題としました。
特設サイトとクイズで、いつでも気軽に知識が習得できるように
課題をどのように乗り越えていますか?
2025年のRDDでは、従業員向けの特設ポータルサイトを立ち上げ、忙しい従業員でも時間や場所を選ばず、それぞれが自身のタイミングで閲覧できる環境を整備しました。
また、ポータルサイト内に1日3問のクイズを設け、楽しみながら希少疾患に関する知識を習得できるようにしました。このクイズは私自身が作成し、「やってみると少し難しいけれど、ポータルサイトの中を読めば必ず答えが見つかる」という絶妙なレベルと所要時間(約2分)を目指して、部のメンバーにも協力してもらいながら調整しました。クイズを解くためにサイトを読んでもらうという流れを作ることで、結果としてより多くの従業員に希少疾患の理解を深めてもらえる仕組み作りを工夫しました。
まずは国内外の希少疾患関連のサイトや患者会サイトを徹底的にリサーチし、表現方法を研究しました。その上でサイト内の情報を「カテゴリ分け」することで、記事の役割を明確にし、課題の解決を図りました。
例えば「医療・疾患情報」のカテゴリは、正確性を最優先しています。専門用語を使わざるを得ない場合は、その用語を別途用語集のページで解説し、すぐに意味を確認できるようにしました。
一方、「お役立ち情報」では、患者さんやご家族の生活に寄り添うことを重視しています。支援制度や防災対策、患者会の情報など、生活に直結する情報を、専門用語を極力使わず、伝わりやすい言葉で解説しています。
また、監修の医師や社内の広報部門とも密に連携し、客観的なアドバイスをもらいながら、日々「最適な表現」を模索し続けています。
一筋の光、希望を与えてくれる取り組みに感謝——患者さんの言葉
啓発活動は、これまでどんな成果を挙げていますか?
情報サイトの月間アクセス数は、現在約1,500件です。一般的なウェブサイトと比べると数字は大きくないかもしれませんが、そもそも情報を探している当事者の方が少ない「希少疾患」という領域であることを踏まえれば、継続的にアクセスがあること自体が、「情報を必要としている方に、しっかり届いている」証ではないかと感じています。
4日間のRDDイベント期間中に配信した情報は、毎日約2,000名の従業員に閲覧いただきました。2月末という繁忙期において、一定の成果を上げることができたと考えています。
また、イベント後のアンケートには、「もっと希少疾患について知りたくなった」「自分にできることを考えたい」などのコメントが寄せられ、こうした反応をいただき、大変嬉しかったですね。
医師をはじめとする医療従事者の方からも「希少疾患に関心を持ち、企業としてウェブサイトを開設してくれてありがとう」といった温かい言葉をいただきました。
また、ある患者さんからは次のような言葉をいただきました。「超希少疾患で治療薬がないと診断され奈落の底に突き落とされたような絶望感に対して、御社の取り組みは一筋の光明、希望を与えてくれる素晴らしい活動であり、感謝しかありません」と。本当に嬉しかったですね。
いろいろな人が集まり、つながる場になれば
これから取り組んでいきたいことは?
患者さんやそのご家族、専門医をお招きした講演会を開催したいです。
私は、現在の業務を担当するまで希少疾患についての知識が全くなかったので、学会やセミナーに参加して一から学んできました。患者さんや患者団体、ご家族の方からお話を伺う機会があり、希少疾患と診断されるまで平均6年から8年かかることなども初めてお聞きしました。患者さんの中には小さいお子さんもいて、胸が締め付けられる思いがしたことを今でも覚えています。
私自身が患者さんなどから直接お話を聞くことで、深く心が動かされた経験から、メディパルグループの従業員にももっと直接対話の機会を提供していきたいと考えています。
若菜の話とも重なりますが、情報サイトにおいても「患者さんの生の声」や「医師による解説記事」のニーズは高いため、そのようなコンテンツを充実させていきたいと考えています。
私たちが目指しているのは、情報サイトが「人と人がつながる場」になることです。具体的には、サイトを見た方が「もしかしたら希少疾患かも?」と気づき、医療へ踏み出す一歩の一助となること、つまり、患者さんと医療をつなぐ架け橋になることです。そのため、今後は初期症状や診断事例に関する情報を手厚くしようと計画しています。
また、希少疾患は患者数が少なく、同じ病気の患者さんでも症状や進行度が異なるため、ご本人もご家族も症例や情報を広く集めたいはずです。そのため、将来的には海外の患者さんやご家族、医療従事者の声も取り入れていきたいと考えています。世界中から情報が集まり、国や地域を越えて、患者さんの希望となる情報を発信できる場に育てていきたいと願っています。
誰一人患者さんを取り残さない社会の実現に向けて、果敢に挑戦する、それがメディパルグループ
活動の中で、「メディパルグループだからできること」や「メディパルグループらしさ」を感じることはありますか?
まず、メディパルグループの「卸・流通企業」という立ち位置そのものが、この活動における最大の強みであると感じています。私たちは医療や健康に関わるあらゆる品目を取り扱っているため、特定の疾患領域や製品に縛られることなく、希少疾患全般について中立かつ公平な情報を提供することができます。
また、私たちはモノを届けるだけでなく、情報を届けることも流通の重要な機能だと捉えています。だからこそ、この情報サイトが人々の健康と社会の発展につながるのであれば、本気で取り組む。そのことがメディパルグループらしさの表れだと強く感じています。
私も同じ思いです。希少疾患は患者数が少なく市場規模も小さい領域ですが、それでもメディパルグループは積極的に取り組んでいます。そこに「誰一人患者さんを取り残さない」という強い思いを感じます。経営層の理解があることで、私たち現場のメンバーも自信を持って活動することができています。
医薬品を届けるだけが卸・流通ではなく、その先の患者さんを思い、生活に寄り添う。そうした思いが根底にあると感じます。そして、それこそがメディパルグループらしさだと思います。