物流に関わる全ての人に、安全で、働きやすい環境を
PALTAC、高生産性と重労働削減を実現した人に優しい物流モデル「SPAID」の開発
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化粧品・日用品、一般用医薬品など、5万品目に上る生活必需品の流通を手がける株式会社PALTAC。社会インフラとして生活に欠かすことのできない役割を担う同社は、大型物流センターのRDC(Regional Distribution Center)を全国に展開しています。
RDCでは流通コストの削減と顧客満足の最大化を図るさまざまな独自技術が活用されています。その一つである「高生産性と重労働削減を実現した人に優しい物流モデル、SPAID(スペイド、Super Productivity Advanced Innovative Distribution)」について、開発に携わった研究開発本部部長 和田秀夫が紹介します。
株式会社PALTAC(パルタック)
全国に事業を展開し、化粧品・日用品、一般用医薬品の卸売を中心に行っています。主にドラッグストアやディスカウントストア向けに化粧品・日用品、一般用医薬品を供給しており、効率的な物流と豊富な商品ラインアップを生かして暮らしの質を高めています。
豊富なノウハウに、AIやロボット技術などを組み合わせた物流モデル
PALTACでは2016年の業革推進室(現・研究開発本部)の発足以来、RDCの自動化、省力化による生産性向上を追求してきました。そこで開発されたのがSPAIDです。
SPAIDは、あらゆる生活必需品を日本の隅々まで届けてきたPALTACの豊富な物流ノウハウに、AIやロボット技術などの先端技術を組み合わせて開発されました。
特長は、高い生産性や出荷精度に加えて重労働の削減を実現した「人に優しい物流モデル」であること。「年齢、性別を問わず、安全で働きやすい環境の実現を目指しました。また、正確で無駄なく効率的な作業が可能になることで負担やストレスなく自分の仕事に集中できるようになり、より成果を実感しやすくなるため、現場で働く方のやりがいや生きがいにもつながると考えています(和田、以下同)」。
女性や高齢者を含む全ての人に働きやすい環境を提供、バラ物流の増加に対応するために
SPAIDが生まれた背景には、物流業界を取り巻くさまざまな課題があります。
「開発のきっかけとして大きかったのは、労働力人口の減少に伴う人手不足です」。日本全体で働く人の数が減少する中、物流業界でも、女性や高齢者を含む全ての人に活躍いただける人に優しい労働環境を提供することによる労働力確保が、これまで以上に必要になります。また、「SPAID開発につながったもう一つの課題にバラ物流の増加があります」。
物流には大きく分けて、メーカーから納入される商品を段ボールケースのまま届ける「ケース物流」と、段ボールケース内の商品を注文された数だけ抜き出し、他の商品と一緒に折りたたみコンテナにまとめて届ける「バラ物流」があります。
近年、社会環境の変化などにより消費者の価値観が多様化。店舗はさまざまな好みに対応するため品揃えを増やさなければならなくなり、バラ物流の割合が増えました。
そのため、物流センターでも、多種多様な商品を複数詰めて一つの折りたたみコンテナを完成させることが必要になり、作業者は広い物流センターの異なる場所に置いてある商品を、長い距離を歩いてピッキングするなど身体的な負担が増していました。
PALTACに脈々と流れる思想と、「PALTAC MIND」から生まれたSPAID
こうした課題を解決するために、SPAIDは開発されました。「そもそもPALTACには、働く人によりよい環境を提供するという思想が脈々と流れています」。
例えばRDCでは、作業中の身体への負担が少しでも軽くなるようにコンクリートの床に疲労軽減マットを敷いた箇所があります。あるいは、段ボールケースをコンベヤに乗せる際、作業者の腰に負担がかからないよう作業台の高さを数㎝単位で調整するなど、こうした細かい工夫がRDCの随所にみられます。
SPAIDも、働く人に優しいよりよい環境を提供する思想を体現したものと言えます。
また、PALTACは、自社の価値観を示したPALTAC MINDの一つとして、「新しい発想と技術で変革に挑戦」を掲げています。こうした価値観は、PALTAC MINDの策定以前から社内に根付いており、誰もが簡単、正確、スピーディーに出荷することが可能なピッキングカート「SPIEC(スピーク、Scan Piece Picking Cart)」や、段ボールケースを安全に開封するための自社開発カッターなどは、その思想を先取りした取り組みの一例です。
「SPAIDの開発コンセプトは、『世の中に無いものは自分たちで設計して造る』、そして『世の中にある技術は最先端のものを積極的に取り入れ、革新的な物流センターを造る』。これはまさにPALTAC MINDです」。
上流から下流までの自動化や、歩かない、探さない物流を実現
SPAIDは実際に、人に優しい物流をどのように実現しているのでしょう。
ケース物流では、上流から下流までの工程を自動化でつなげました。商品を運び込む入荷エリアでは、商品を積んだパレットをコンベヤに置くだけで自動的に商品の種類、数量を検出できます。これにより検品作業者の動線とフォークリフトで運ぶ動線の交差がなくなり、危険な作業を排除するとともに、カウントミスや入力ミスもなくなり精度向上も実現しています。また、トラックドライバーの荷降ろし作業や待機時間も大幅に削減されました。
さらに、出荷指示のかかった商品のコンベヤ投入や、搬送用什器への商品の積み付けにはロボットを活用しています。重たい段ボールケースを長時間扱うため、ケース物流の中でも特に作業者への負担が大きかったこの2つの作業を自動化したことで、人に優しい物流を実現するとともに、生産性や出荷精度も向上しました。
バラ物流においては、「MUPPS (Multitaskcrane Piece Picking System)」というシステムを独自開発し、商品が作業者の手元まで正確に自動搬送される「歩かない、探さない物流」を実現しました。バラ物流では、まず最初に段ボールケースを開梱する作業が必要であるため、開梱専用のロボットを自社開発しました。段ボールケース天面をカットし、切り取った天面を廃棄するところまでロボットが自動で行うことで、カッターを使用した手作業でのカット負担や、怪我をする危険性を排除しています。その後、開梱された段ボールケースから商品を保管用トレーに入れ替えて保管し、出荷指示がかかった数量の商品を保管用トレーから折りたたみコンテナに詰め替えて出荷します。これらの工程では、保管用トレーや折りたたみコンテナが、各作業エリアにいる作業者の手元まで自動搬送されてきます。そのため、従来方式で行っていた作業者が広いRDC内を歩いて移動して商品をピック・補充する作業や、商品を詰めた重い折りたたみコンテナをコンベヤ投入する重労働を排除することができました。
前例のない挑戦に、モノ作り特化したメンバーで挑む
和田は2016年の入社以来、SPAIDの開発全般に携わってきました。共に開発に携わったのは、和田と同じく中途採用で入社した技術者たちです。電機メーカーで新技術の開発経験がある和田の他、ソフトウェア開発、機械設計、電気設計など、モノ作りに特化したメンバーが集まりました。出身業界は金融、電機メーカー、機械設備メーカー、自動車などとさまざま。「いろいろな経験とノウハウを融合させることで、新たな発想・新技術が生まれたと思います」。
しかし、和田たちに与えられた最初のミッションの一つは、自動倉庫の全ての出庫レーンのケースピッキング作業を自動化するという非常に困難なものでした。通常、複数レーンあるような物流センターでは、1レーンだけ試験的にロボットを導入し、残りは安全を見て人が対応する従来の設備にする選択が取られます。全レーンロボット化するということは、開発に失敗すると物流センターが機能しなくなり、出荷ができず、皆さまの暮らしに影響が出てしまう恐れのある、非常に大きなチャレンジでした。
しかしながら新しい発想と技術で変革に挑戦するPALTACは、そのMINDの通り、全レーン自動化という変革に挑戦する道を選びました。「当時、全出庫レーンにロボットを導入し、成功した事例は調べた限りなかったと思います」。
日本中が目標とする物流センターを造り上げるという思い
「最初にロボットを導入したRDC新潟では、段ボールケースを認識するカメラとAI、いわばロボットの目と脳に関する技術が、現在ほど成熟していませんでした」。
最初に据付けた大手メーカーのロボットでは思うような成果が出ず、和田たちは世の中にあるさまざまな新技術を探し続けました。そしてついに自分たちが目指す成果につながるベンチャー企業の技術を発見し入れ替え導入を決意します。その決断をしたのは、稼働1カ月ほど前でしたが、ベンチャー企業と何度も検証を重ね、全レーンへのロボット導入を成し遂げました。
RDC新潟はその後のSPAID開発の基礎となり、和田たちは開発を加速させていきます。
SPAIDを使ってセンターの運用を設計・管理することになる物流本部や、情報システム本部と積極的に連携し、現場の意見や要望を吸い上げ、ブラッシュアップしていきました。「作業をする人に喜んでもらえるよう取り組んでいます」。
先に挙げたベンチャー企業のほか、SPAID開発前から付き合いがある協力会社からも、さまざまな提案、アドバイスを受けました。
時にはぶつかり合いもあったと和田は言います。「開発メンバーも協力会社の技術者も、自分なりの芯や軸、そしてプロ意識を持った職人気質の人たちでしたから」。みんな責任感が強く、一生懸命だからこそのぶつかり合い。しかし、どのメンバーも、物流に携わる日本中の人たちが目標とする物流センターを、自分たちで造り上げる思いは共通でした。そして、「やり切る力」を原動力に一丸となって開発を進めました。
その結果、2019年にはRDC埼玉に、2023年には栃木物流センターに、SPAIDが導入されます。PALTACは、人に優しく安心して働ける環境を整え、労働力人口減少という日本の社会問題にも対応する礎を築いたのです。
2倍の生産性を実現、未来に豊かな実りをもたらす物流を目指す
和田は現在、開発部門を管理、プロジェクトの目標設定や戦略立案、進捗管理などを行っています。
SPAID開発の経験から、開発部門にはさらなる変革を目指す気概が根付いたと感じています。「自分たちで考え尽くし新しいものを創り出す。そして、今日できたものは過去として、さらにいいものを突き詰めていく。そんなPALTACのプロ意識が、SPAIDの開発、そしてそのたゆまぬ変革を通じて、受け継がれています」。
RDCの進化は止まりません。中期経営計画 PALTAC VISION 2027では、これまでの2倍の生産性を実現することを表明しています。最新設備を導入することはもちろん、各設備を最適稼働させることにより、ダントツNo.1の生産性実現を目指しています。
「高い目標ですが、現在のSPAIDは先人が撒いてくれた種から果実が実り、私たちがそれを享受して実現したもの。だからこそ私たちは2倍の生産性という目標を掲げ、その実現のため研究開発を進め、10年後、20年後のために豊かな実りを残さなければなりません」。
そのためには、自社の強みを伸ばしながらも、さまざまな企業と共同開発する分野をすみ分け、最先端の技術開発に取り組んでいくことも和田は考えています。
PALTACの人に優しい物流モデルを進化させていく挑戦は、これからも続いていきます。
社員の想い
取り組みを通じて、毎日をつむいでいる社員の想いを、インタビュー映像でご紹介。